明星学園

トピックス(小学校)

お知らせ

校長だより
校長 福田 純一

あっという間に4月が終わります。日本に春がなくなってしまうのではないか、ということを耳にしたぐらい、真夏のような暑い日々が続きました。でも、その暑さの中、子どもたちは、汗を一杯かきながら鬼ごっこやサッカー、野球に興じています。とても元気です。明日から、子どもたちが楽しみにしている連休になります。

さて、今回は、「0」のお話しです。先日参加した研究会で、中学校数学で学習する「正負の数」の話題になりました。
正負の数の世界では、「3」や「-2」を次の様に考えます。

(+3) + + + + + + + … …
             - - - - … …
(-2)       + + + + … …
       - - - - - - … …

図の右側部分は、「+」と「-」が釣り合っていて、キャンセルされている状態です。「+3」も「-2」も、左端の釣り合っていない部分だけが性質として表れていることになります。ですから、3+(-2)の様な演算ですと、下図の様に「+」と「-」が更に2セットが釣り合い、「+」が1つ半端になり、それが数の性質として表れるので答えは「+1」になります。
 
(+3) + + + + + + + … …
       ↑ ↑ - - - - … …
              
(-2)   ↓ ↓ + + + + … …     
             - - - - - - … …
(+1)   + … … … … … … … …

では、この様な考え方で「0」を考えると、どうなるでしょうか。

 0       + + + + +  … …
         - - - - -  … …

「0」は、「+」と「-」が丁度釣り合っている状態だと考えられます。「0」の意味がそれまでの「(存在し)ない、空集合」(リンゴが0個)という事だけでなく、それまでの状態を想像してみたくなる物として見えてきます。
ここまでは、数学的内容なのですが、ここである一人の先生が私たちの身の回りのことを例えにしながら話をしてくれました。

『散歩で立ち寄った公園がとても綺麗で気持ちよかったとしましょう。その時、誰が、何時、掃除をしてくれているのだろうか、と考えることがこの「0」の新しい解釈と同じなのです。』

私は、その先生の話を聞いた瞬間に思わず触角が動きました。ゆっくりと自分の中に繰り入れていきました。公園が綺麗な状態が「0」だとすると…、掃除をすることが…、「+」。ゴミを散らかすことが…、「-」。なるほど、そう考えると、綺麗な公園は、ちょうど釣り合った状態といえます。その時点では見えないことを推し量って考えること、これが中学生にとって、正負の数を学ぶだけでなく、人として大切なことなのか、と改めて気づかされました。
私の頭の中では、まだまだ問答が続きました。

相手の気持ちを考えて行動する、などと日常よく言われていることです。でも、この「0」の様に見えない部分を想像する事なしに相手の気持ちを本当に理解することはできないでしょう。また、こうしたことは、人とのコミュニケーションだけに限らず、自然科学の世界でも人類史上多くの偉人たちが、当たり前の中に隠れている事実を探求し、様々な概念や法則を発見して来たではないですか。とかく数学というと、気むずかしく、冷たい印象がありますが、その背景には、こんな一面が隠れているのかと…。

連休中にいろんな場所を訪ねることでしょう。いろんな人と出会うことでしょう。いろんな生き物に出会うかもしれません。その時に、目の前の今を見ながら、眺めながら、その背後に隠されている事を想像してみると、楽しさが増えるかもしれません。世界観が広がるかもしれません。どうぞすてきな時間をお過ごしください。