明星学園

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葉のない枝から咲く花

校長だより
校長 福田純一 


 小学校北校舎と中央棟の間にある桜通り。新校舎建築時に植えたソメイヨシノがすっかり立派になり、今年もかわいい花を咲かせ始めました。建物の間で少し温かいのでしょうか。毎年、ここの桜は早めに咲き始め、今年も6年生を送ってくれました。啓蟄を過ぎ、池には毎年のようにカエルが卵を産みに来ました。カラスノエンドウなどの春の野草もいつの間にかすっかり立派に育っています。1年間が経つのは本当に早いものです。今回は、春に開花する花の話をしましょう。

 校庭のコブシも桜通のソメイヨシノも葉が全く生えていないのに、いきなり花が咲きます。葉が生い茂り、その後に花が咲く順序ならばわかるのですが、どうもその順序には合点がいきません。
 そんなことがいつからか気になっていたある日、冬の小菅村まで出かけた帰り道、奥多摩湖の周辺でニホンザルの群れを見かけました。通常は、若い葉や木の実をを食べているサルたちですが、冬場はエサが不足します。彼らは、枯れたように見える枝を折り、皮をむしり取っては、その皮を食べているようでした。シカやウシなどの動物ならば、消化酵素に加えて腸内にバクテリアを持っていますから、固い繊維(セルロース)も消化して栄養として吸収しているのは分かります。しかし、ニホンザルはこうしたバクテリアを腸内に持っているのでしょうか。

 この疑問が、先ほどの以前から気になっていた疑問と重なりました。植物は地下茎に貯蔵でんぷんを蓄えることが多いですが、ひょっとすると冬の間、木の枝にでんぷんを蓄えているのかもしれません。もしそうならば、葉の茂らない樹木からいきなり花が咲くことも、野生のサルたちが冬場エサの乏しい間に樹木の枝をかじっているのも合点がいきます。私の仮説は、正しいのでしょうか。なるほどと思った人は、枝を薄く輪切りにして、そこへうがい薬を薄めたものをかけてみてください。4年生以上ならわかりますよね。でんぷんはヨウ素液に反応して青紫色に変化します。この反応があれば、疑問は解き明かされたことになります。興味のある人は、春休みに試してみてください。

 卒業生にも話したことですが、明星学園の教科プログラムでは、ただ何かができるということではなく、それらの学習を通して、その先にある世界へつながる何かを手にすることができるように考えられています。ちょっと難しい言葉を使うと、学んだ概念や法則をさらに発展させていく考え方を持つことができるということになります。現在文科省でもラセン状の課程が主張されていますが、それとは意味合いが異なっています。ただ単に繰り返し習熟させるのではなく、発展的な課題にそれまで学んだ基礎的な内容が含まれていて、さらに次の新しい概念や法則を捉えていくことができるという特徴になります。例えば、1年生から体育では側転を学習します。これは、オリンピックの体操選手が演じている技に通じる基本となる側転を1年生で学習します。学年が進むにつれてロンダート、ロンダートからバック転などと発展させていくことができますし、鉄棒や跳び箱の技でももちろん生きてくるわけです。こうしたラセン状の発展が系統的にプログラムとして組まれています。

 私自身、明星学園のこうした学びに育てられたのだと思います。もし、明星学園に勤務していなかったら、先ほどのような疑問を抱くこともなかったでしょうし、仮説を立ててみることもなかったでしょう。
 今明星で学んでいること、やってみたことは、きっと、いつか、どこかでその時学んでいることとつながり、「そういうことなのか」と、いう広がりを持った深い理解を得る瞬間が訪れることでしょう。新年度を楽しみにしていてください。