明星学園

トピックス(小学校)

お知らせ

探究・創造

校長だより
探究・創造
9月2日に始まった二学期。盛り沢山の中身でしたが、如何でしたでしょうか。子どもたち一人ひとりにとって、実りある日々であったことを祈ります。
1、公開研究会
11月23日(土)に、公開研究会を行いました。「共に学び合う授業とは」というテーマで、教科教育及び教科外活動の研究・実践を深め、その成果を小学校は算数、中学校は数学と理科、小中としては社会で発表しました。
  
全体会の講師には、教育方法学(特に能力論、学習論、評価論)の第一人者である、京都大学高等教育研究開発推進センター教授の松下佳代先生をお迎えし、貴重な研究成果を伺うことができました。午後の分科会では、松下先生の研究成果を共有した上で、更に討議を深め、研究・実践の質を高めました。子どもの最善の利益を求めた角突き合わせた議論は美しく、真理の探究において他者の存在が必要であることを再認識した一時となりました。ご多忙の中参加してくださった全ての方々に心から感謝したいと思います。
全体会講師の松下先生は、1時間目から授業を参観され、子どもたちの中に分け入って学びの質を分析・総合して下さいました。また、授業後の検討会及び講演後の分科会討論にも参加され、「こうすれば子どもたちの躓きを克服する事ができるのではないか」という新たな提案もしてくださいました。学者と現場が乖離しがちな中、自ら現場に足を運び、理論と実践を統一して下さっている事に改めて、尊敬と感謝の念を表したいと思います。 
算数教育は、長年に亘り研究・実践を積み重ねて来ました。しかしながら、今なお新しい発見があり、それが子どもたちの幸せに繋がっていきます。算数を苦手と思っている人は、算数を苦手にさせられてきたのかも知れません。これからも学者を含めた集団的研究を深め、その成果を世の中に発信し続けて行きます。今回は、小学校の提案が算数のみに絞られたこともあり、提案・関連授業に関しては、外部の参加者を優先させて頂きました。その旨事前にお伝えしたところ、保護者の皆様には気持ち良くご協力頂く事ができました。この場を借りて御礼申し上げます。

2、クリスマスツリー
 
5年2組の保護者さんから、学校にクリスマスツリーとツリー飾りを寄付して下さいました。早速4年生・5年生の昇降口に飾らせて頂きました。温かな光を放つツリーが、いつも子どもたちを温かく見守ってくれています。そのツリーに、希音さんのアイディアで、願い事を飾る事になりました。ツリーには素敵な願い事が沢山飾られています。素敵なプレゼントをしてくださった近藤さんに、心より感謝申し上げます。
なお、保護者の皆さまからは、平素より、様々な場でたくさんの御寄付をいただいております。この場をお借りして御礼申し上げます。いつも本当にありがとうございます。

3、土器焼き
  
今年も風物詩である「土器焼き(5年生)」が行われました。この土器焼きは、社会科の教科内総合として行われているものであり、江口先生の熟練の技に依るところが大きいものです。火起こしから始め、土器の表面を乾かし、土器を火の中にくべて、一定の時間焼き上げていきます。このように大変手間暇のかかる作業ですが、子どもたちの主体的な取り組みと、保護者の皆様による手厚いサポートにより、工程はスムーズに進み、最後には立派な土器が焼き上がりました。汗の結晶は職員室のギャラリーに展示されています。ご来校の折には是非お立ち寄り下さい。

4、鉄作り
  
土器焼きが終わると今度は「鉄作り(6年生)」です。この鉄作りも教科内総合であり、江口先生の熟練の技に依るところが大きいものです。あれもこれもやって退ける江口先生は正にスーパーティーチャーです。改めて尊敬と感謝の念を表したいと思います。
鉄作りをするに当たっては、事前に炉を作っておくことが必要です。モルタルを練り、煉瓦に塗って、一つひとつ丁寧に積み重ねていきます。
鉄作り当日は、朝からその炉に火をくべ、ポンプで空気を送り、温度を一定に保ち続けます。そこに純度を上げた砂鉄をくべ、木炭や石灰も加えながら、1日かけて鉄を作っていきます。クライマックスはなんといっても鉄の取り出し。1日を共にした炉をハンマーで壊すと、「オーッ」という歓声とともに、鉄の塊(玉鋼)が現れます。千倉で採ってきた砂鉄がこんな玉鋼になるなんて!子どもたちはものつくりを通じて技術の素晴らしさ、人間の素晴らしさを学んでいきます。

5、和紙作り
 
6年生が鉄作りをしている傍らで、2年生が和紙作りをしていました。これは「総合」の授業として行われているものです。校舎内に生えている「こうぞの木」の枝を切り、その皮をむいて木槌で叩き、バラバラ(繊維)にします。その繊維を水につけ、漉いて和紙にしていきます。校内に生えていた「こうぞの木」から、本当に和紙ができるなんて!!子どもたちは、生産・労働の面白さと素晴らしさを、肌で感じることができたようです。

4、TOKYOを油田に
12月1日(日)に、「TOKYOを油田に!?」というテーマで、明星会(卒業生の会)主催の講演会が行われました。講師は54回生の「染谷ゆみさん」が勤めて下さいました。  
宣伝用に配布されたチラシには、「使い終わったお家の油で電気を起こす!環境問題解決と新しいエネルギーのお話です。てんぷら油で自動車が走ったり、桜並木がイルミネーションで飾られたり、すぐに誰でも参加できる環境問題のお話。地球規模の視点を持って、循環型の地球社会作りへ貢献します。」と書かれていました。
染谷さんは、家庭から出る使用済み食用油から、車を動かす燃料にもなり発電もできるバイオディーゼル燃料「VDF(Vegetable Diesel Fuel)」を作ることに世界で初めて成功しました。彼女はこの燃料のことを分かりやすく「てんぷら油エネルギー」と呼んでいます。家庭から出る使用済み食用油。なんと年間20万トンにも及びます。2リットルのペットボトル1億本分。そのほとんどが、ゴミとして捨てられたり、生活排水として流されたり。しかし、使用済みの油は、燃料以外にも石鹸や家畜の飼料、畑の肥料などに再利用することができる「資源」なのです。使用済み食用油を「資源」として捉えたとき、東京をはじめとした大都市は「資源」の宝庫。彼女には東京が世界有数の「油田」に見えたと言います。
使用済み食用油は化石燃料とは違い、菜種や大豆から生まれた植物油。これを燃やしても酸性雨の原因となる硫黄酸化物が発生しません。呼吸器障害の原因となる黒煙も軽油の2分の1以下。走行性・燃費・価格、どれをとっても軽油と比べて遜色ありません。VDFの引火点は185℃。軽油が約50℃であるのに比べると保管しておく上でも安全です。そして、車の改造は一切不要ですべてのディーゼル車に使用できます。
100リットルの使用済み食用油から精製されてできるのは95リットルのVDF。自社の油回収車はもちろんのこと、東京自由が丘と目黒通り周辺のお店や施設を結ぶ送迎バス、トラクターなどの燃料にも使用されています。また、アースデイ東京・ロハスフェスタ・フジロックフェスティバル・目黒川みんなのイルミネーション等、多くのイベントでVDF発電が導入されています。
現在使用済み食用油を回収するステーションは都内に約140箇所。それ以外に行政の回収ステーション、直接回収する先の飲食店があります。染谷さんは回収先を増やすことにも尽力しています。ある一定量の燃料を回収するためには当然のことなのですが、それだけではなく、VDFが欲しいという人には、燃料を受け取るだけではなく、自分たちの手で使用済み食用油を集めることも同時に行ってほしい、それでこそ捨てるという行為に責任を持つことにつながり、廃棄されるものが資源として生まれ変わるという循環を実感してもらえると言います。
油は使った後、一般家庭では廃棄していますが、方法によっては環境破壊につながることもあります。「TOKYO油電力」に使った油を持っていけば、地域の電力になるだけでなく、環境破壊も食い止められます。もし、油の処理に困っているなら、回収ステーションに油を持っていってみてはいかがでしょうか。「株式会社TOKYO油電力」は、その選択肢の一つです。「TOKYO油電力」とは、一般家庭で使われた油を回収し、電力に変え供給するサービス。今、最も注目を浴びている再生化電力といえるでしょう。
一軒家の1日の電力を賄うには、どれだけの油が必要かご存知でしょうか?答はたった1リットル。では車の場合はどうでしょうか?1リットルで10km走る事ができます。しかもこの油は全て、家庭やお店から出た不要な油の再利用。つまり原料のコストは、町の皆さんのご厚意です。環境のために、私たちが協力できる事も沢山ありそうです。
染谷さんは、油から石鹸やキャンドルを作るワークショップにも取り組まれています。
「実は、油から造る事が出来るキャンドルというのは、有事の際にとても頼りになり、10分あれば100ccのお湯を沸かすことも出来ます。ガスが止まって火がおこせない時、停電して真っ暗な夜が心細い時、ご家庭に油があれば熱も明かりも手に入れられる。キャンドルの作り方を知ってさえいれば、油はすぐに資源になるのです。それを伝えるためにワークショップを行っています。現在私どものところでは、1リットルの使用済み油があれば、ご家庭で使う1日分の電力が賄えます」。
最後に、私の心に残った染谷さんの言葉を紹介して、2019年から2020年への橋渡しにしたいと思います。
「人間は、小さな存在に見えるかもしれないけれど、人間の能力、可能性は未知数です。人間がこれまで開発したものなど、まだ数パーセントにも満たないくらいなのではないでしょうか。新しい概念が登場すれば、今まで信じていたものが覆されて、常識が変わってしまいます。可能性が開発された未来から見たら、現在は、たいへん窮屈に映るかもしれません。」