明星学園

トピックス(小学校)

お知らせ

新しい年を迎えて 

校長だより
新たな年を迎えて
校長 剛力正和
新年おめでとうございます。本年も宜しくお願い申し上げます。
冬休みが明けて子どもたちが学園に戻ってきました。本当に嬉しいことです。子どもたちと会えるのは、子どもたちが元気でいてくれるからです。その事に感謝し、今年はじめての「ありがとう」を贈りたいと思います。
三学期は新たに10名の友達を明星に迎えることが出来ました。新しい出会いに感謝です。新しい友達の素晴らしさから学ぶ中で、私たちもより幸せになり、私たちの素晴らしさから学ぶ中で、新しい友達にもより幸せになって欲しいと思います。
人の営みというものは常に一筋縄ではいきません。三学期も喜怒哀楽あると思いますが、困ったときほど力を合わせ、みんなで皆が幸せになる世界を創造していきたいと思います。

1、東京オリンピック
今年はいよいよ東京でオリンピックが開催されます。実に56年振りの東京(日本)開催となります。明星からも女子バスケット部出身の3人(本橋さん、中田さん、オコエさん)が日本代表候補としてエントリーされています。本橋さんは先のアジアカップで司令塔(スコアリングガード)として活躍し、得点王とアシスト王に輝いて、MVPとオールスター5をダブル受賞しました。中田さんもオコエさんも頑張っています。3人の活躍を、学園を挙げて応援したいと思います。

2、新学習指導要領の実施
今年は小学校で新学習指導要領が実施されます。学習指導要領は時代や社会の変化に対応すべく10年に一度改訂されます。これまでの10年で時代と社会は大きく変わりました。そしてこれからも変わり続けていきます。「今と未来に生きる子どもたちに必要な学力とは何なのか」、そこをしっかり見据えた上で新学習指導要領は改訂され続けて行きます。
では一体、今年の4月から実施される新学習指導要領は、これまでとどのように変わるのでしょうか。その事について少し触れておきたいと思います。
これまでの学習指導要領では「何を教えるか」が重視されていました。これに対し新学習指導要領では「何ができるようになるか」を明確化することが求められ、そこでは3つの資質・能力(①「知識及び技能(実際の社会や生活で生きて働く)」、②「思考力・判断力・表現力(未知の状況にも対応出来る)」、③「学びに向かう力・人間性等(学んだ事を人生や社会に生かそうとする)」が位置づけられています。更には「何をどう学ぶか」も具体化されました。アクティブラーニングという表現や、主体的・対話的で深い学びという表現を、皆様も既に耳にされているのではないでしょうか。
明星学園は「個性尊重・自主自立・自由平等」という教育理念に基づき、95年に亘り先駆的な教育実践を展開してきました。ですから今回の学習指導要領改訂に関しても、「やっと世の中が明星学園の方を向き始めたか」という冷静な評価をしています。明星学園ではこれまでも「自分の頭で考え、自分の心で感じ、判断し、行動する」事を大切にしてきました。知識を記憶するだけの学習ではなく、児童(生徒)自身の知識を外側に向けて広げていくための教育を行って来たのです。そこでは児童・生徒が本来もっている「知りたがり、やりたがり、話したがり、繋がりたがり」という欲求に根ざしながら各教科の本質に迫り、対象固有の仕組みと働きについて、子どもたちとともに学び・深めてきました。つまり明星学園では、アクティブラーニングという活動主義に陥るのではなく、教科の本質に迫るディープアクティブラーニングを貫く中で、学問・文化を継承・発展及び創造していく主人公を育て続けてきたのです。
明星学園が独自にカリキュラムを編成し、独自のテキストを作成してきたのは、未だない道を開拓してきたからに他なりません。そこに探究と創造が必然化しました。その営みにおいては、学者や全国の教師・保護者を交えた共同研究によって、明星学園の教育を鍛え上げることが必要であり、その成果を公開研究会という場で世に公表し厳しく批判を受ける中で、私立学校でありながらも、公教育の一助を担い続けてきました。その事を創立者の赤井先生は「明星学園は社会立の学校である」と表現されています。新学習指要領の追い風を受ける中、これからも明星学園は更に精進を重ね、日本の教育をリードしていきます。

3、中学の先駆的実践
さて、中学のことにも触れておきます。中学に於ける新学習指導要領の実施は来年ですが、明星の中学では2018年度から新しい教科である「総合探究科」を導入し、先駆的な教育実践を始めています。
この総合探究科では、7年生で「哲学対話(相手の意見を聞く力や他者と対話しながら共通の価値を探り出していく力を養う)・図書館と情報(情報の使い方や調べ方から、発信の方法などを学習する)」、8年生で「探究実践(7年次の内容をさらに深めながら、身近なテーマを共同で研究し、具体的な研究手順を学習する)」、9年生で「卒業研究(自らテーマを決定して、それを探究していく過程を研究論文としてまとめる。発表会では研究論文を元にプレゼンテーションを行う」という具合に、3年間を通じて総合探究科としての体系的な授業が組まれています。卒業研究に関しては、保護者や学校関係の方が様々な形で生徒達の研究をサポートして下さっています。また、講演会やガイダンスなどにも来て下さり、研究を具体的に進めるためのアドバイスもして下さっています。
明星学園ではこれまでも知識を記憶するだけの学習ではなく、生徒自身の知性を外側に向けて行くための教育を行ってきました。その為、学習における探究を大切にしてきた長い歴史を持っています。「総合探究科」は、それらの成果をさらに発展させるために設立されました。
探究とは、“なぜ?”と自分で疑問をもち、その答を見つけようと試行錯誤しながら、一歩ずつ踏み出して学んでいくことです。「総合探究科」の授業では、各教科で学んだ知識や技能を活用し、他者との対話を通して、意味を深く考えることを身につけます。そして、生徒たちは新たな問題に出会ったときに、解決する能力のある人間へと成長していきます。便利な世の中では簡単に答えにたどり着いてしまう反面、考える力を養う機会が失われてしまいます。総合探究科では探究の軌跡を大切にすることで、考える力と知識の両方を育んでいくのです。勿論これらのことは、各教科教育においても大切にされてきたことであり、総合探究科との相乗効果により、教科の授業もより充実したものに高めることができています。
中学の学校案内(パンフレット)を読むと「コンピューターや人工知能があたりまえとなるこれからの時代、社会で必要とされるのは、知識が多いだけではなく、高い知性で自発的に行動出来る人間です、それは、多くの経験で得た学力や知識を“てこの支点”として活用し、発展させることのできる人間です。 ‐中略‐ 難しい社会問題や哲学的な問題などは、簡単に答を出せるものではありません。しかし、深く知ろうとして、悩んだり解決しようとする経験は必ずみなさんの思考や感性を鍛え、知性を高めることになるのです。」と書かれています。
今回の新学習指導要領では「学校と社会の乖離」が見直され、「本当の学力」との関わりで教育実践が展開されることになりました。子どもたちに求められる学力は、日々社会作りに参画している私たち大人にも求められる事になります。その相互作用が確かな学力と豊かな社会作りに繋がって行く事を確認したいと思います。丁度今年は東京オリンピックを迎えます。東京オリンピックに関する学者の論考を引用しながら、本当の学力とは何かについて少し考えてみたいと思います。