明星学園

トピックス(小学校)

お知らせ

継承・発展および創造①

校長だより
2年ぶりの運動会

秋は本当に素晴らしい季節です。天高く馬肥ゆる秋とは上手く表現したものです。
どこからともなく甘い香りも漂ってきます。金木犀です。少し前までは百日紅の花も目を楽しませてくれました。
さて、台風の影響が心配された運動会ですが、予定通り10月2日(土)に小学校、3日(日)に中学校の運動会を実施する事ができました。10月1日(金)は台風の影響で一日中雨が降っていましたが、当日はこれ以上ない秋晴れとなり、待ちに待った運動会を子どもたちと存分に楽しむことができました。運動会を迎えるに当たっては、保護者の皆様にも多大なご理解・ご協力を頂きました。心より感謝申し上げます。
コロナ禍で運動会を行う上では、様々な苦労もありました。中学生が選んだ「革命」というテーマがその事を物語っています。感染予防に加え感染拡大防止も必要とされる中では、オンラインでの結団式、練習期間の短縮、小中分離の運動会、異学年種目や全体種目の取りやめ、運動会実施時間の短縮など、これまで受け継がれてきた運動会に革命を起こさざるを得ませんでした。
革命とはいうものの、それ抜きに運動会を実施することはできませんでしたので、事はスムーズに進みました。そればかりか新たな運動会の創造は、子どもと子ども、教師と子どもの協働性を生み出し、より豊かな運動会の創造に向けて力を合わせる中で、お互いに対する尊敬と信頼・感謝が高められていきました。
運動会を運営する上では、運動会実行委員の活躍とともに、各係の活躍も必要でした。運動会本番を控え、各係で最低限の打ち合わせはしたものの、練習期間短縮との関わりでリハーサルを行う事はできず、本番が心配されましたが、「自分の頭で考え、自分の心で感じ、判断・行動」する事を保障された子どもたちは、指示を待つのではなく「どうすればよいか」を自ら考え、見事役割を果たす中で、自分達の運動会を存分に楽しんでいました。そしてその姿からは、もっともっとこのような機会を設けることが、子どもたちの豊かな成長・発達に於いて必要な事を、痛感させられました。
ちなみに小学生が選んだテーマは「勝敗無縁」。そこには「勝ち負け気にせず楽しもう」という副題も付けられていました。開会式では、「今年の運動会のテーマは」というアナウンスが響くと、朝礼台脇に設置された薬玉から「勝敗無縁―勝ち負け気にせず楽しもう―」という垂れ幕が表れ、運動会のテーマが子どもたちの心にしっかり染みこんでいきました。
子どもたちの「ものの見方考え方」は、多様な機会を通じて育てられています。今回の運動会では、体育の授業で大切にしている「ともに上手くなる」「ともに楽しみ競い合う」「ともに意味を問い直す」という「3とも」が、運動会という場にも活かされ、その具現化に向けて組織的な営みが展開されていました。
勝敗無縁とはいうものの、子どもたちは個人の種目でも団体の種目でも、勝敗が競われるものに関しては1位を目指して全力を出し切りました。勝敗へのこだわりが個人のパフォーマンスや集団としてのパフォーマンスを最大限に引き出し、そこに熱い声援が加わる中で、運動会固有の感動と興奮が高められていきました。
勝敗無縁で大切なのは、勝敗がないことではなく、運動会そのものの意味を問い続けることにあります。勝敗がお互いを否定したり、潰し合ったりするのであれば、運動会を行う必要はありません。その逆に勝敗がお互いの素晴らしさを引き出し、可能な限り伸ばし合うものであるならば、勝敗は大いに必要なものとなります。だからこそ体育の授業では「ともに上手くなる」「ともに楽しみ競い合う」「ともに意味を考える」という「3とも」を大切にし、多様な種目を実践的に学ぶ中でそれらを、より確かで豊かなものへと高め続けているのです。
「勝敗無縁―勝ち負け気にせず楽しもう―」というテーマに基づいて運動会に臨んだ子どもたちは、運動会という非日常的な世界を存分に楽しむ中で、もっと素敵な自分、もっと素敵な友達、もっと素敵な自分たちを発見する事ができたと思います。そしてその中では、運動会の価値が認知され、運動会を受け継ぎ、より確かで豊かなものへと発展させ、今はない新たな運動会を創造していく主体者が育まれたものと推察しています。
「勝敗無縁」というテーマに基づく運動会は、皆で創り上げた運動会ですが、中でも最高学年である六年生は常にリーダーシップを発揮し「みんなが楽しめる運動会の創造」に最大限の力を発揮してくれました。夏休みから準備をしていた5・6年生の創作表現が急遽、単学年での表現に変更されるなど、大きな苦悩もありましが、苦悩に挑む中で本来の力が発揮され、今回およびこれからの運動会に沢山の宝を残してくれたことに、心から感謝したいと思います。
新たな歴史が築かれる中では、多くの葛藤も見られましたが、先生方は常に子どもたちに寄り添い、一つひとつ丁寧に紐解いてくださいました。また保護者の皆様も常に温かく見守って下さいました。保護者の皆様にご参観頂けなかったことは、本当に心苦しい限りですが、ご理解・ご協力が得られなければ、この運動会を創り上げることはできませんでした。裏方に徹して下さったことに心より感謝申し上げます。
体育の授業を含む多様な機会の学びが運動会に活かされたように、運動会での学びはこれからに活かされ、より確かで豊かなものへと高められていきます。運動会という一大行事を通じて一つになった明星学園小学校がこの先、一人ひとりと皆の力でどのように「生きるが楽しい学校」を創造し続けていくかを、温かく見守って頂ければ幸いです。
明星学園で34年目を迎えている私にとっては、今回の運動会が33回目の運動会となりました。唯一できなかったのが昨年度の運動会だったのです。歴史を振り返れば色々な変革もありました。1組系が赤・黄・橙、2組系が緑・白・青の6色で行っていた運動会。1・2・3年生と中学生、4・5・6年生というまとまりで表現された応援合戦。1・2・3年生、4・5・6年生、中学生というまとまりで行われるようになった表現と応援合戦。1組系が白・青、2組系が赤・黄の4色で行われるようになった運動会。小中合同で行う全体競技(1~9年生合同)の導入。ハチマキの廃止と色ティシャツの導入。応援合戦終了後に途中退場していた1・2・3年生を閉会式まで参加させる。またそれに伴い時間短縮とプログラム構成を見直す(入場行進の廃止と各競技における入退場の工夫、競技時間の短縮、退場行進の簡易化など)。熱中症予防との関係で児童・生徒席と保護者席を入れ換える。その上で全色にテントを設置する。そして小中を分離し、時間短縮と共に保護者の参観もご遠慮頂いたコロナ禍(今回)の運動会。
中には革命の名に相応しいものもあり、激しい議論も展開されましたが、いずれの時にも、みんなで決めた
ことには責任を持ち、「みんなでみんなが楽しめる運動会」を創造し、子どもたちとの掛け替えのない一時を過ごしてきました。その全てが大切な宝となっています。運動会の継承・発展および創造という歴史的な営みに関われた事に、改めて感謝したいと思います。