明星学園

トピックス(小学校)

お知らせ

ものの見方・考え方

校長だより
1、×◎ ⚘
 ある男の子は一日が終わると教室の黒板に、×◎⚘の評価を記して帰ります。私は、×が記されたときには落胆し、◎が記されたときには安堵し、⚘(花丸)が記された日には跳び上がって喜びます。
 ×の日が続くときもあれば⚘の日が続くときもあります。正に一喜一憂の日々です。そして先週の金曜日には、⚘⚘⚘が記されました。思わず涙が溢れました。
 学校の主人公は子どもたちです。ですから評価は子どもたちの手によって下されなければなりません。下した評価に基づきそれらを維持・発展および創造するのも子どもたちです。そうなってはじめて子どもたちは、学校での生活・学びの主人公となることができるからです。 
 勿論、教師も×を◎や⚘にすべくベストを尽くします。しかし根本に沿わなければそれは、その場しのぎに過ぎません。仮に教師のお膳立てで解決できたとしても、それでは子どもたちに変革・創造の力が育ったことにはなりません。
 学校にはカリキュラムというものがあり、それを中心にして「時間」と「空間」が構成されています。そこでは往々にしてカリキュラムを習得することが優先され、その枠に教師も児童も縛られます。しかしながら児童は、未来の社会に生きる主体ですから、そこではそれらを習得すると共に、その過程と結果に於いてどのような力が子どもたちに育ったかが問われなければなりません。培った力で未来の社会を創造する事が求められているのです。
 今度の日曜日(11月21日)に行われる公開研究会では、全体会の講師に 末永幸歩さんをお招きし、「問い」や「答えが生まれる場」というテーマで特別講演して頂きます。末永さんは、「絵を描く」「ものをつくる」「美術史の知識を得る」といった知識・技術偏重の美術教育に問題意識を持ち、アートを通して「ものの見方・考え方を広げる」ことに力点を置いたユニークな授業を展開されています。そして、「美術がこんなに楽しかったなんて!」「物事を考えるための基本がわかる授業」と、大きな反響を得られています。
 学校では往々にして、教師によって与えられた課題に基づいて学習が展開され、その過程と結果が教師によって評価されています。結果先にありきで、教師も子どももその枠から抜け出すことが出来ないのです。未来のことは誰にもわかりません。だからこそ未来に生きる子どもたち(私たち大人も)は、今(過去も含む)を学ぶと共に、そこで得られた力を未来へと活用し、自ら社会を創造する主体者に育つことが必要です。と同時にその事は、学校での学びがその事を保障するものとなっているか否かを問うものともなります。教師によって提示される課題が絶対性を帯びれば帯びるほど、子ども・子どもたちの思考性も学びの形態もそれに規定されてしまいます。
 「ものの見方・考え方」を広げない限り、強固な枠に縛られていることに気づくことも、その枠を崩すこともできないことを、実体験の中で痛感した末永さんは、アートという特性を活かして聳え立つ壁に挑みます。これまでにないユニークな実践を通して理論と実践を統一し、世に発信し続ける中、その取り組みに大きな反響が寄せられています。
 先にも述べた通り、自ら下した評価に基づき、それらを維持・発展および創造するのは、子ども・子どもたち自身です。だからこそ学校は、「問い」や「答えが生まれる場」でなければなりません。一人の男の子によって下される毎日の評価は、「問い」そのものです。その問いから始まり、どのように答えが導き出されるのか。私たち教師(大人)自身も、ものの見方・考え方を広げながら、子ども・子どもたちと共に歩みを進めて行きたいと思います。

2、オンラインバザー
 コロナ禍に於いては、「ミニマムかつマキシマム」という方針の下、保護者の皆様にはご来校を控えて頂いております。学校での子どもたちの様子が把握できないばかりか、保護者の皆様の繋がりにおいてもご不自由をお掛けするものとなり、大変申し訳なく感じておりますが、引き続きご理解・ご協力下さいますようお願い申し上げます。
 保護者の皆様と共に学園を継承・発展および創造してきた明星学園では、日々の活動においても行事においても、保護者の皆様に多大なご尽力を頂いてきました。特にバザーは、保護者主体で運営して頂き、その活動を通じて、保護者間・教員と保護者・保護者と子どもたちの深い親睦が築かれる場となっておりましたが、コロナ禍という未曾有の事態と遭遇する中では、その実現も難しく、昨年度は大変残念ながら、中止とせざるを得ませんでした。
 新型コロナウイルスの終息が見えない中、3月には来年度のバザーをどうするかという相談が学校に持ちかけられました。昨年度実施できなかっただけに、どんな形になっても実施しようということが確認され、バザー委員のメンバーを募ることが決まりました。その段階で中止を決めてしまえば、全てを失ってしまったからです。
 新年度が始まり、第一回目のバザー委員会が開催された折りに私は、「中止という結果になってしまったとしても、こうして皆さんと出会うことが出来、バザー実施に向けて力を合わせられることが宝ですよね!」とお話しさせて頂きました。その第一回目のバザー委員会から早速、協働作業が始まり、色々なケースを想定しながら企画が進められましたが、ある段階に来て「オンライン」で行う事が決まり、それに向けて全力を尽して頂く中で、初めての取り組みとは思えない見事なオンラインバザーが、11月3日~23日まで実施されるに至りました。
 このオンラインバザーは日本国内に留まらず、全世界に配信されています。それもまた凄い事です。先日私のところにアメリカ在住の卒業生からラインが届いたので、オンラインバザーを開催中だから是非楽しんでと伝えると、その翌日に「素晴らしい」という返事が届きました。
 答えをこれまでのものに求めるのであれば、今年度のバザーも中止という結論に至っていたことでしょう。オンラインでの実施を決断し、道なき道を歩む中で新たな歴史を築くことが出来たのは正に、「そのようなものの見方・考え方」をされる方々が集っていたからに他なりません。実現に至っては、多々苦労があったことと拝察しますが、新たな形でバザーを成し遂げて下さったことに心より感謝申し上げます。例年は当日だけで完結していたものが、3週間に亘る開催期間とオンラインでのやりとりとなったため、運営に携わって下さっている方々には今まで以上の緊張とご負担をお掛けしているようです。最後までパイオニアとしての役割を果たして頂けますようお願いいたします。

3、6年生の大島旅行
 「ものの見方・考え方」が大切なことは、6年生の大島旅行からも学ぶことが出来ました。大島旅行に出かけるのは通常5年生ですが、今年の6年生はコロナ禍で昨年度大島旅行に行けなかったため、今年度に大島旅行を延期しました。1年半越しの大島旅行となったわけです。
 6年生の通常としては奈良への修学旅行が位置づけられています。勿論修学旅行をなくすことは出来ませんから、6年生は今年度中に「大島旅行」と「修学旅行」の二つを行う事になります。ものの見方・考え方次第では、昨年度の段階で大島旅行を諦めてしまうのですが、現6年生は、先生たちは勿論、子どもたちも保護者の皆様もその事を選択せず、今年度の年間予定表に、5月19日~21日の日程で6年生の大島旅行が書き込まれました。
 年間予定表には書き込まれたものの、緊急事態宣言が再発令されたため、5月の実施は見送られることになりました。こうなると頭を過るのは「延期」か「中止」の選択です。
 実施可能な時期は秋になります。しかし秋には運動会も修学旅行もあります。公開研究会も控えているのです。そのような中、学年が出した答えは11月10日~12日に延期するというものでした。修学旅行は10月20日~22日ですから、1ヶ月の間に2回宿泊行事をする事になります。何の迷いもなくその事を判断し、事を着々と進めていく学年スタッフと子どもたち。勿論保護者の皆様も支持して下さり、その計画は見事に実施されました。
 計画は見事に実施されたものの、出発前日から旅行終了まで、予期せぬ出来事が待っていました。そのことは学園ホームページ(小学校)の先生ブログに詳述されていますので、そちらをご一読下さい。(波と風の影響で朝・昼に出航するジェットフォイルが欠航となり、夜10時発のさるびあ丸で、8時間かけて大島に行くことになったのです。)
 明星学園の目指す子ども像は「自分の頭で考え、心で感じ、判断・行動出来る子ども」です。判断をする上でも、行動をする上でも、ものの見方・考え方が伴います。言動・思考が自分の色々なものを作り出す力となり、自分の生き方となっていくのです。
 9年生の修学旅行も含め、今年度の宿泊行事(コロナ禍の宿泊行事)の取りを務めた、学年主任の小関先生からは、竹芝桟橋で無事解散した後に、次のようなメールが届きました。
「国内引率では間違いなく今までで一番苦戦しましたが、その分忘れられない旅になりました。子どもたちも本当によく付いてきてくれました。変更しなかったところがどこにもない旅。しおりの意味が全くなし。帰りの船が就航決定になると子どもたちは複雑な様子でした。『まだいたい。でも帰らなきゃなんでしょ!!しょうがない。』でも、文句は一言もありませんでした。
 今回改めて明星の子どもたちの強さを見ることができました。これほどに予定が変更になっても、竹の如くしなやかに受け止めて、柔軟に対応できる子どもたちは、明星教育の宝であり、象徴です。体調不良もなし。大したものです。例年の大島では感じることができなかったであろう、船に依存せざるを得ない島の人々の生活の難しさ、苦労、そしておおらかな時の流れを子どもたちは学んだと思います。大自然を学ぶことにさらに、そこで暮らす人々の生活を学んだ価値は計り知れないと思います。金曜日の昼間だというのに、見送りよりも遙かに多いお出迎えがありました。嬉しかったです。きっと帰りがけに大島の思い出を話してくれているでしょう。こんなに難しい舵取りだったのに、引率者の間では一度も意見はぶつからず、常に笑い声が響く2泊の旅でした。素晴らしい仲間と一緒に仕事が出来ていることに改めて感謝したいと思います。」
 予定調和のない今回の大島旅行を実施する上では、保護者の方からも心強いサポートをいただきました。
「大島旅行のフェリーなど調整、本当にありがとうございます!!!案内のメールを見ましたがお見事ですね!!まさに「諦めたらそこで試合終了」普通なら早々に中止にしていたと思います。子どもにも『いつかきみが大人になった時、困難に遭っても諦めなかった大人たちがいたことを思い返す時がくると思う』という話をしました。急遽の変更により、親が仕事などでフェリー乗り場まで送れないという家庭もいるかも?と思いました。周りでは親同士で連携して、送れない子供は他の親が一緒に連れて行く流れになっていますが、そういった繋がりのないご家庭がもしかしたらいるかもしれません。もしお困りでしたら、井の頭公園駅待ち合わせで引率することは可能です。午後便・夜便とも対応できます。どんな旅になっても想い出深い旅行になりそうですね!どうぞ、健康にはお気をつけて、楽しんでください!子どももなんだかんだで、楽しみにしています。」
 やはり明星学園は保護者の皆様に支えられる中で継承・発展および創造を遂げてきた学園です。その有り難さを肝に銘じるとともに、これからも「子ども・保護者・教職員」の三位一体で明星の教育を創造して参りま す。引き続きご支援の程宜しくお願いいたします。