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2018年春の全園研究会『高橋源一郎さんを招いて~ぼくらの学校なんだぜ~』

中学校ニュース
3月20日(火)、小中高の教員が一堂に会し、2018年『春の全園研究会』が開催されました。講師は小説家、文芸評論家の高橋源一郎氏(現、明治学院大学教授)。講演のテーマは『ぼくらの学校なんだぜ』

1981年発表の『さよなら、ギャングたち』で小説家デビュー。近年は社会問題への発言も多く、2011年から2015年まで『朝日新聞』で「論壇時評」を担当。現在、同紙上で『高橋源一郎の「歩きながら、考える」』を連載中。近著に、『ぼくらの民主主義なんだぜ』(2015朝日新書)、『丘の上のバカ-ぼくらの民主主義なんだぜ2』(2016)、『読んじゃいなよ!-明治学院大学国際学部高橋源一郎ゼミで岩波新書をよむ』(2016岩波新書)、『ぼくたちはこの国をこんなふうに愛することに決めた(2017集英社新書)など。精力的に活動されています。
講演は、子育ての話から始まり、文学、教育の話へと行きつ戻りつしながら展開していきました。さらには、民主主義についての考察、明星の創立同人たちが影響を受けたデューイのプラグマティズム哲学の話にまで及びました。

そこに共通しているのは弱者へのまなざしです。耳を澄まさないと聞こえない弱者の声。真剣に聞かないと聞こえない微弱なメッセージ。障害を持った子どもの声に耳を傾けることで、親として多くのことを学んだと言います。読者の声を聴くことで作家は成長する。先生は生徒からどれだけ多くを教わることができるか。社会的弱者や障碍者を守ってあげようではなく、そういう人がいると周りが元気になるという事実。

教員がどれだけの権力を持っているか自覚はあるか? 上から下へのメッセージは畢竟声が大きくなり、生徒の声を聞き取る感度が鈍る。自分が生徒の前で正しさを振りかざしていないか? 生徒は沈黙し、あるいは教師の顔色をうかがい、その時教師は生徒から何も学ぶことはできない。ユーモアを交えた柔らかな言葉ながら、鋭い主張が続きます。
高橋さんのお話をうかがいながら、「強さ」とは何だろうと考えさせられました。自分自身を振り返ってみても、自信のないときほど教師としての正義を振りかざしていた気がします。余裕のないとき、生徒の大切な声は耳に入ってきません。「悪い施設(学校)はマニュアル通り、良い施設(学校)ほど何も言えない人の話を聞いてあげる」、そんな話もありました。難しいことです。マニュアルを守っていれば確かに悩まずに済む。自己決定の責任から逃れることができる。しかし、それでは教師としての成長はない。そこからどう脱却するか、すべての教師が目指すべきところだろうと思います。

最後に高橋さんは、「自戒を込めてです。難しいことですよね」と、にこっとしながらおっしゃいました。「大切なのは楽しいことです。正しいことより楽しいことを。教育されようとする主体がないと教育は成り立たない。生徒が本当の先生を見つけるきっかけを作ってあげたい。それを目指して私は授業をしています。」そんな言葉で2時間の研究会は、お開きとなりました。

(中学校副校長 堀内雅人)