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2018年度9年生(中3)の『卒業研究発表会』を報告します!

中学校ニュース
9年生(中3)の『卒業研究発表会』が1月18日(学内向け)、19日(保護者・一般向け)の両日にわたって行われました。本校の卒業研究は、今年度で23年目を迎えました。生徒全員が自分の関心のある分野、大好きなこと、こだわりのあるテーマから問いを見つけ、卒業論文として自分だけの冊子を仕上げます。そしてこの日の発表会は、全員がお客さんを前にパワーポイントを用いてプレゼンテーションを行いました。
今年度より新教科「総合探究科」がスタートし、これまで教科外として取り組んできた卒研へ向けての学びも7年(中1)から時間割の中に入ることになりました。とは言え、研究は教室の中だけではできません。実際に自分の眼や足を使って調査したり、観察したり、専門家に会いに行ったりということ(してみる計画)が求められます。今年も多くの保護者ボランティア(大学や研究所で研究をされていたり、社会の中で専門をもって活躍されている保護者の皆さん)のお力をお借りしました。
そんな協力体制のもと、今年も中学生らしい本当に興味深い発表をいくつも見ることができました。

第1部は、12人の生徒が「いちょうのホール」で発表しました。いただいたアンケートのコメントをはさみながら、そのうちのいくつかを紹介します。

◇「なぜペットボトル入りのビールは見かけないのか?」
・テーマを設定したときの視点が面白いと思った。また、イラストを多用したプレゼンが分かりやすく、語り口もみごとだった。10社ほどのビール会社に直接質問して回答を求めたり、さまざまなアンケートを取るなど行動力が素晴らしい。「論文が完成したら着払いでいいから送ってほしい」と言ってくれたというビール会社さん、その後が楽しみです。

◇「バッタの生息環境による体色の違いについて」
・目のつけどころがいいと思いました。長期にわたり多摩川に出かけ、観察した結果が示されていました。わからなかった点もあったようですが、それも今後の課題になるのでしょうね。

◇「東大紛争~現代社会の歪み・矛盾~」
・テーマへの出会いのプロセス、「好きなアイドル⇒彼が登場した映画⇒原作の漫画⇒たまたま描かれていたもの」が興味深かった。たまたまの出会いをこれほどの内容に消化・発表できたことはすばらしい。発表者の今後がとても楽しみです。

◇「なぜ私は『沖縄に基地が必要なのか』というテーマを変えたのか」
・興味の視点も良いと思ったが、現地に実際に行き、民泊し、土地や人々の話を聞き、ニュースで報道されていることがすべてではないと感じながら、さらに思考を深めていくその経緯が良く伝わってきた。
・自分の考えの変化を素直に受け止め、問いの立て方を変えていたところが素晴らしいと感じた。質問者への返答に対しても自分の立場をきちんと主張できていてよかったです。

◇「映画の世界観はどのようにしてつくられているのか?」
・映画が本当に好きだということが良く伝わってくる発表でした。映画のチラシが日本に入ってくるとデザインはもちろんタイトルまで変わっているということに着目する視点は、すぐ身近にあるお菓子や飲み物のパッケージや商品名の、国による違いなど、今後の研究の広がりを感じさせるものでした。

第2部は、中学校校舎の普通教室に場所を移し、いちょうのホールでの発表者以外全員が7つの教室に分かれ、プレゼンを行いました。ホールほどたくさんのお客さんは入りませんが、発表者との距離が近い分、笑い声が聞こえるなど、和気あいあいと進められました。
以下、いただいたアンケートのコメントをはさみながら、そのうちのいくつかを紹介します。

◇「東日本大震災の復興と現在の人の心」
・被災された方からインタビューを行い、「心の復興」というテーマにたどりついたことがすばらしいと思った。
・修学旅行で行かなければ感じられなかったことを、すごくはっきりと伝えてくれました。自分の言葉で話してくれて分かりやすかった。

◇「中国人の日本に対する意識について」
・中国に関わる仕事をしているので、興味深く聴きました。発表にもあったように、時代や環境によって意識は変わります。今の日本の報道に惑わされず、これからも自分の眼で見て、自分で調べたことをもとに、日本や中国、その他の国々のことを正しく捉え、多くの国の人々のことを理解してほしいと思います。展示してあった論文も読みました。よく調べてますね。

◇「世界の%の秘密」
・数にだまされることに気づけたことは、大きな学びだったと思います。除菌はどこに定義づけるかで%の設定が変化するので、そこも考えると良いかもしれません。

◇「着物を日常的に着るには」
・女性らしい観点からの発表で大変良かった。日本の誇る和服の伝統文化を長く伝えてほしいと思っていたので、若い人が興味を持っていたことが大変うれしい。

◇その他 「バタフライエフェクトとは?」「正義と悪~本当の正義とは何か~」「なぜ宮古島には地下ダムがあるのか」「この世界は仮想現実なのか?」「クワガタの嗅覚の研究」「物語の平行世界と現実の平行世界について」「美しくなるためには」「ウィルスをうまく利用することはできないのか」「UMAを信じる人と信じない人のちがいとは?」「人はなぜメイクするのか?」他

  プレゼンの発表原稿を作りながら多くの生徒は不安に駆られます。「ちゃんと聞いてくれるかなあ?」「質問に答えられるかなあ?」 特に一日目の下級生に対しての発表では、逃げ出したくなる生徒もいるようです。しかし、下級生たちはコメントカードにしっかり感想を書きながら聞いてくれています。質疑応答では、的確な質問をしたり、温かな感想を述べてくれたりします。
下級生からのコメントカードの束を手にした9年(中3)生は、ホッとした表情になります。それとともに「ちゃんと聞いてくれるかなあ」と感じていた不安が、「もっとしっかり説明できれば良かったなあ」「もっと発表の時間がほしいなあ」という前向きな気持ちへと変わっています。「二日目の一般の人ってどういう人が見に来るのかなあ? たくさん来たら嫌だなあ」と後ろ向きな声を上げていた生徒から、「たくさんの人に来てほしいなあ。批判的な意見を言われても答えられるように準備しておこう」といった言葉が出てきたりします。
まさに語り手は聞き手によって育つということを感じます。今回の発表会でも、7・8年生(中1・2)の姿を褒めてくださったアンケートが目立ちました。9年生は卒業を前にある者は自信を持ち、ある者は今後につながる悔しさを感じつつ、大きく成長できたのではないかと思います。
そして、8年(中2)生もまた大きな刺激を受けながら、すでに来年度の卒業研究に向けての取り組みがスタートしました。どうぞ今後をご期待ください。

(中学校副校長 堀内雅人)