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この人に会いたい!『恋の相手は女の子』の著者の室井舞花さんをお招きしました!

中学校ニュース
11月27日(水)、特別授業「この人に会いたい!」企画で『恋の相手は女の子』の著者である室井舞花さんに来ていただき、7・9年生合同でお話を聞きました。2年前、ある9年生がブックトークの時間にこの本を取り上げて紹介したことがありました。その時、英語科の高山教諭の元同僚ということがわかり、いつか実際にお話しを聞いてみたいと話していたことがようやく実現しました。その9年生は今、「同性婚はどうやったら法制化できるのか」ということを卒研のテーマに選び、一生懸命自分の結論をまとめているところだったので、今回の室井さんのお話からもさらに新たな刺激をたくさんもらったようです。

室井さんがLGBTの当事者として、どんなことを考えたり悩んだりして、今に至るのかということを柔らかくお話してくださったことを紹介します。

室井さんは、まず、小さい頃に感じた違和感のことを話してくれました。最初に違和感を感じたのは、保育園か小学校1年生のころだったそう。小さいころから、外で遊ぶことが好きで、外で走り回っていたこともあり(?)、男の子に間違われることが多かったそうです。そのたびに、どうして自分は男の子だと思われるのだろう、男の子だと間違われるのは何でだろう、と思っていたそう。また、ワンピースを着ていると、周囲から「今日は女の子らしいね」と声をかけられる。どうして自分は見た目のことを言われるんだろう。何が男の子と女の子の境目なのかよくわからないと思っていたそうです。 
その次に違和感を感じたのは、13歳の時の自分の変化を意識したとき。当時、仲の良くなった女の子に対して、友達以上の特別な感情を持つようになっていることに気づいたそうです。もともと好きになる芸能人も女性が多く、思い返してみると、いちばん気になるのは女の子であることに気づいたとのこと。なんでだろう、これってヤバイな。これはあんまりいいことではないんだろうなぁと感じていたそうです。当時、室井さんの周りには女の子を好きになる人はいなかった。さらに、13歳くらいの時期は「異性に興味を持つ時期」と書いてある保健の教科書を見て、自分の気持ちは絶対バレてはいけないんだなと強く思ったそうです。

誰にも言うことができないまま、動物が好きだったこともあり、農業高校に進学。高校生になり、恋バナが増えていったけれど、何がきっかけで自分のことがバレてしまうかわからないと、その手の話になると「興味ない」と答え続けていたそうです。学校も友達も大好きだったけれど、自分の絶対に見せられない部分を意識しながら高校生活を送っており、そのことがとても苦しかったし、それと同時に、自分にとても怒りを感じていたと話してくれました。というのも、自分でも女の子として女の子が好きなのか、男の子として女の子が好きなのか、わからない。そんな自分は一体何者なのだろう。でも、同じような人がおらず、どうしていいかわからない、怖い。さらに、自分のことがバレなかったとしても、この先どうなるのだろう、どうやってこの先、生きていけばいいのかわからないとぐるぐる悩み、苦しい思いを抱えて過ごしていたそうです。

そんな室井さんの転機は、18歳の時にピースボートに乗った時。船上で、たまたま女の子として女の子を好きになる人に出会ったのだそうです。その人の話を聞いて、自分と改めて向き合うことになったそう。自分で自分自身に「あなたは、女の子が好きですよね」と問いかけ、それから少しずつ周囲にも言うようになったのだそうです。その後、19歳の時に、はじめて恋をすることができたそうです。当時、自分にとっては奇跡だと感じたそうですが、それでも親には友達としてしか紹介できず。近しい人にはじめて「カミングアウト」したのは、自分のいちばん大切な家族であるお姉さんだったそうです。お姉さんにお手紙を書いて「カミングアウト」したそうですが、もし受け入れられなかったらと思うととても緊張したそうです。お姉さんから「応援するよ」と声をかけてくれて、本当にほっとしたと話していました。どれだけ当時の室井さんは勇気を振り絞って「カミングアウト」したのかを想像すると、何かこみあげてくるものがありました。また、その中で、最初にカミングアウトしなくてはいけないのは、誰でもない自分自身に対してという話がとても印象的でした。

25歳の時に、今のパートナーの方と付き合い始めるも、お店などでエスカレーターに乗ると、そこにある鏡に並んだパートナーと自分の姿は見ることができなかったということも話してくれました。というのも、前後に乗っている周囲の人が自分達をどう見ているのかわからない、怖い。でも、パートナーに「自分たちは何か悪いことをしてる?何も悪いことはしてないじゃない!」と言われたこともきっかけとなり、ようやくエスカレーターの鏡にうつる姿を見ることができたそうです。その時、ようやく人の目線が怖くなくなったのだそうです。その時に、「自分は自分に嘘をつかなくても生きていけるんだろうな、このまま、私はもう大丈夫かもしれない」と思えたそうです。だからこそ、13歳の自分に「未来はある」と伝えたいし、みんなにも社会は変わり続けているから、今は苦しいと思っても、未来はどうなるかわからない。だから「未来は、明るい」ということを伝えたいと話してくれました。この言葉にパワーをもらった7・9年生は少なくなかったはず!
お話の中で、室井さんとパートナーの方が2013年に挙げた結婚式の映像を見せてもらいましたが、たくさんの人に祝福されて、幸せそうにいるお2人の姿を見て、本当にじーんときました。これもお2人の誠実な人柄が影響しているのでしょう。人が誰かを好きになれること、そして、たくさんの人たちに祝福されることは、なんて素敵なことなのだろうと個人的にはとても温かい気持ちになりました。

最後に、LGBTの基本的なこともレクチャーしてくれました。その中で、人には「からだの性」「こころの性」「性的指向」の3つの性があり、それぞれどちらか一方ということはないし、その時によって変わる。人の性はグラデーションのように多様なのだ、それをあらわす「レインボーカラー」がシンボルという話が特に心に響きました。

今回、室井さんには、LGBT当事者として話をしてもらいましたが、室井さんが話してくれたことは、LGBT当事者に限らず、私たちひとりひとりが持つ様々な「違い」を認め合いながら、よりよく生きていくことにもつながっていく普遍的な話だと感じました。今の私たちが生きる社会でも多様であることを大切にしていきたいと思いながらの、あっという間の1時間でした。室井さん、ありがとうございました。

室井さんの話を聞いて、7・9年生から寄せられた感想を紹介します。
★やっぱり、人と関わるのって大事なんだなって思った。でも、人の目を気にしてしまう自分がいる。そんな自分が嫌いだって思った。室井さんみたいに人の目を気にしないで自分に自信のある人に憧れます。(7年)
★性別なんてみんな様々ということを世界中のみんなが分かっていれば、当事者はもっと生きやすくなると、すごく思いました。社会はどんどん変わっているのだから、もっと未来が変わるのを望んでいます。本当に性別はグラデーションだとすごく思いました。LGBTだけではなく、どんな人でも生きやすい世の中にしていきたいです。(7年)
★エスカレーターの鏡には間違った自分がいると思い、つらくなってしまうのは、すごくつらいと思います。テレビで、オネエがいじられるのを笑ってしまったのですが、いじられている本人はすごく嫌な気持ちがあると思うので、もう笑わないです。もっとちがう受け止め方をしたいと思います。(7年)
★LGBTの人たちは、いないんじゃなくて、見えていないだけ。カミングアウトしなくてもしても、普通に受け入れればいい。(7年)
★性の表現はハッキリと分けられているのではなく、グラデーションになっているというのがすごく良いなと思いました。どちらかを選ばなくてはいけないなんてことはなくて、自分の中でも曖昧にしていいと感じる。(9年)
★社会の形や考えがまだ偏っていて、女子が女子を好きなこと(他のことでも言える)を認められないようになっていて、ストレスになるのはその人、本人の良さが出にくくなっててよくないと思った。「男っぽい」と言われて、自分の性別がわからなくなる、これが自分と向き合うきっかけになるか、それともバラさないようにと内側で奥底にしまって気にしないようにしてしまうか、これは「自分」の気持ちをどれだけ大切に考えるか、できるかということだと思った。私は異性のことを好きな人にしか出会ったことはないと思ってたけど、「左ききの人と同じくらいの割合」っていうのを聞いたから、もしかしたら私自身もカミングアウトがしづらい環境にしてしまっているのかもしれないと思うと、自分の行動も社会を変えていくのには必要なことだと思った。「自分にウソをつかないで生きていけるようになった」というのは、とっても素晴らしいことだと思った。(9年)
★どんどん社会は変わっているんだなっていうのを思ってはいたたけど、改めて実感した。私は、LGBTとかではないけど、「自分自身にカミングアウト」をすることは、その他のことにも関係しているなと思いました。たとえば、自分が将来、仕事に就いたときに、自分はこれが好きじゃないって本心では思ってても、自分にカミングアウトできずに苦しい時を過ごす時とかもあると思うので、これから自分が生きていく上で、自分自身にカミングアウトすることは大切だと学べました。(9年)
★人と違うということは決して悪いことなんかじゃない。それは「個性」だと思う。LGBTだから幸せになっちゃいけないなんて、そんなことは絶対にないし、誰にだって幸せになる権利はある。だからこそ「周りとちがう」ということだけで差別するのではなく、それを「個性」として認め合い、共存していき、誰も「ちがう」ということで悩むことがない世の中にしていかなければならないと思う。(9年)
★同じ境遇を持つ人、共通のもの、ことを持っている人と出会うことって、大切なことだと思うし、すごいことなんだなと思いました。こうして、室井さんがたくさんの人の前に立ってお話しているのを見て、堂々と自分のことを話していて、かっこいいなと思いました。結婚パーティーをしているときのお二人を見て、すごく幸せそうでいいな~と思ったし、あんなにたくさんの人に祝福してもらっていてすごいなと思いました。LGBTのことだけでなく、LGBTじゃない人にも伝えられるメッセージをたくさん学ぶことができたし、室井さんを見ていて、本当に未来はあり、未来は明るいものだなと考えることができました。(9年)
★同性で付き合うことに対して、偏見は何も持っていなかったけれど、環境が息苦しくさせてしまうことがあると分かりました。法律的に同性婚はまだ認められていないけれど、こんなにも素敵なら良いなぁと思いました。同性でも子どもがほしいという人にとっては養子という手もあるから愛という形もたくさんあると思いました。(9年)
★室井さん自身の話で「鏡」というものが出てきたが、自分自身で自分を認められていない時は、自分のすがたを見たくないものなんだなと思った。認められていない・受け入れられていない時、「鏡」はきっと在ってほしくないものだったのかもしれないけれど、自分の気持ちを確かめるためにはとても重要なものではないかと感じた。(9年)
★日本の“閉じた”考え方で学生時代の室井さんみたいに、隠して人に言えなくて、辛い思いをしている人達がまだまだ沢山いるんだなって思うと、私たちはみんな「知る」努力をしないとな、と強く感じました。「いないのではなく見えていないだけ」、確かにそうだな、と思いました。室井さんたちの結婚式の映像を見て「生きててよかった」って言ったことばにすごいなと思って、みんながそう思える世の中になったらいいな、近づければいいな。そうしていきたいです。(9年)

(9年学年主任 小畑典子)