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7年『哲学対話』授業レポート①「なぜ迷惑なことを人はやるのか?」

中学校ニュース
中学校校舎の屋上に上がると、ひんやりとする空気の中、大きく視界が開けます。緑濃い井の頭の森、玉川上水の緑のロード、東には新宿の高層ビル群、天気が良ければ西にはすでに雪をまとった富士山の堂々とした姿を見ることができます。
先週の7年『総合探究』「哲学対話」の授業は、そんな屋上でクラスを3つに分けての対話が行われました。すでに授業では「問い」を出し合っています。各クラス、100以上の「問い」が生徒から出され、プリントされたものが「哲学ノート」に貼られています。
この日の授業は、その中から選ばれた3つの「問い」について対話が行われました。①多数決はいつも正しいのか? ②贅沢は良いこと、悪いこと? ③なぜ迷惑なことを人はやるのか?

①を担当するのはレイナ(明星学園高校を卒業後、上智大・大学院で哲学を学び、哲学対話とかかわりながら、現在人と人をつなぐさまざまなクリエイティブな仕事に携わっています)。②を担当するのはカレン(明星学園中高を卒業後、慶応大に進み、現在東京大学大学院で哲学を研究しています)。そして③を担当したのが私、堀内でした。
今回は、「なぜ迷惑なことを人はやるのか?」の対話の様子を簡単に紹介したいと思います。対話は、こんな男子生徒の一言から始まりました。「この間電車の中でおじさんがぶつかってきて謝りもしないから、咳をするふりをしちゃった。迷惑なことをされて、腹が立つとこちらも迷惑なことをしちゃうんじゃないかな。人間ってそういうところあるでしょ!」うなずく生徒が数人、微妙な表情の生徒が数人。
数秒の沈黙の後、一人の女子生徒が語り始めました。「話が変わってしまうかもしれないけど、私は何をするにもペースが遅くて、小学校の時に周りの人に迷惑ばかりかけてしまっていたの。」先ほどの男子生徒がすかさず声を発しました。「それは迷惑とは言わないよ!」
「でも、集団で行動するときそれを乱す人がいると迷惑だと思われるんじゃないの!」「わざと乱す人と、合わせようと頑張っても合わせられないのとは違うんじゃない?」「でも、先生の立場からとか、その立場によって違うかもしれないよ。」
別の男子生徒が話題を変えました。「これまで7年間近く学校で生活してきて、いろんな経験をしたり見たりしてきているんだけど、一番トラブルになるのが、からかいやいじりだったりする。すごく迷惑なんだけど、全然その子は自覚していない。」「嫌なら嫌って言えばいいでしょ。僕ならそうするよ。」別の男子生徒も話に加わります。「やめてって言っても、聞いてもらえない。」「それは本気で言っていないからじゃない? 笑いながら言ってない? やめろ!って本気で言わないと!」「なかなか言えないよ。悪気がないからよけい言いづらい。」「言われなくてもそういうこと、気付いてあげることも大事なんだと思う。」

正解の答えがあるわけでもなく、授業の終わりをどこに持っていくかの想定があるわけでもありません。でも、教員は交通整理するだけで生徒の発言だけで流れができていきました。特別に迷惑をかける悪い人がいるというより、無自覚な行為、コミュニケーションをとることの難しさ、そんなことが語られる場となりました。授業の最後には、対話を経て感じた自分の答えをノートに書いていきます。さて、どんなことが書かれているのでしょうか。

(副校長 堀内)