明星学園

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(つづき)「してみる計画」と保護者・卒業生ボランティアの役割2

中学校ニュース
*文字数が多く、1回のブログで掲載しきれませんでした。
以下、卒業研究保護者ボランティアの皆さんに協力していただいて実現した『~してみる計画』の一部です。
卒業生も大いに活躍してくれています。

(中学校副校長 堀内)


◇研究テーマ:「人間の悪は罰することで解決できるのか」「死刑囚」

教誨(きょうかい)師の嵩海史(かさみひろし)さんのお話を伺いに、9年生(中3)2名と出かけてきました。訪問先は埼玉県東松山市の了善寺(真宗大谷派)で、嵩さんが住職をされているお寺です。教誨師という職業はあまり広く知られていませんが、刑務所で被収容者の求めに応じて宗教者として話をしたり、彼らの相談にのって社会復帰を支えたりする、といった活動をされている方々です。仏教やキリスト教を中心に、全国の刑務所で現在約1900名の教誨師の方が活動されています。

生徒たちは、事前に嵩さんへの質問を3点ずつにまとめて送り、当日は、その応答を中心にお話していただきました。たとえば、「今まで教誨をしていて1番印象に残った出来事は?」という質問や、「死刑制度は必要だと思いますか?」という、なかなか直球の問いかけもありました。嵩さんはこれらの問いに対して、一つずつ丁寧に、生徒たちにも分かりやすくお話をしていただきました。

生き急ぐように10代で2度の結婚をして刑務所に入ってきたある少女の話。殺人犯は他の受刑者に比べて警戒心が強く、なかなか心を開こうとしない人が多い印象があること。また広島の刑務所では教誨師は「お化けの話」はできない(タブー?)らしいという小話も含めて、お話しいただける範囲で、たくさんの貴重なお話を伺うことができました。



◇研究テーマ:「オリジナルとは何かを2020年東京五輪エンブレム問題から考える」

保護者ボランティアでデザイナーの冨宇加淳さんにお話をうかがいました。冨宇加さんの略歴とお仕事についてお話しいただいた後、あらかじめ用意しておいた質問にお答えいただきました。今回の五輪エンブレム問題をどう思うか、佐野氏のエンブレムの取り下げに賛成か反対か、普段のお仕事で模倣だといわれてしまわないためにしていることはあるか、などの質問に丁寧にお答えいただきました。

デザイナーは、クライアントの要望や納期、予算といった複数の制約がある中で作品を生み出していかなくてはならない仕事であること、今回の事件を報じたマスコミ報道の偏りの怖さ、これは自分のオリジナルデザインだというデザイナーの良心とプライドについてなど興味深いお話を次から次に聞くことができました。

そして最後には自分を知ることの大切さの話になりました。個性を大切にされてこなかったら、何が自分らしさか、何がオリジナリティかが分からなくなってしまう。生徒一人ひとりの個性を大切にする明星学園で是非、自分らしさを探求して欲しいと生徒への力強いエールをいただき、あっという間に時間が過ぎていきました。冨宇加さんの「もの作り」への純粋な気持ちが伝わってきたインタビューでした。これから結論を書いていく生徒にとって、この問題を自分に引き寄せて考える良い機会となりました。ご協力ありがとうございました。



◇研究テーマ:「夢に法則性はあるか」「自分に合った快適な睡眠を得るためにはどうすればよいか」「なぜ人は夢を見るのか」

夢や睡眠に関わるテーマを研究している生徒3名が筑波大学の国際統合睡眠医科学研究機構を訪問してきました。この研究所は、睡眠に関わるさまざまな内容を研究している施設です。館内には「夢」をモチーフにした大きなオブジェがあったりと、とても印象的な施設でした。当日は、機構長の柳沢正史先生が直接対応してくださいました。生徒が取り組んでいるテーマについて質問に答えて下さったり、関連事項を解説して下さったりと、とても丁寧に対応して頂けました。さらに実験施設を見学させて頂き、あっという間に時間が経ちました。とても充実した1日となりました。



◇研究テーマ:「ホームレスについて~どうしたらホームレスになれるのか~」

ホームレスに興味をもって卒業研究のテーマにしている9年(中3)生と、曙橋にあるビッグイシュー日本東京事務所に行ってきました。お話をしてくださったのは、スタッフである森さんです。「ビッグイシュー」は、ホームレスの方に雑誌を売るという仕事を提供し、自立を応援するビジネスです。1冊350円の雑誌を売ると、そのうち180円が販売者の収入になります。

そもそも「ホームレス」は誰のことを指すのかということから始まり、ホームレス問題は、貧困問題などの社会問題の氷山の一角でしかないということをお話してくださいました。

また、ホームレスの方にとって、ビッグイシューを売るということは、単に収入を得るだけでなく、人とのつながりが大きな喜びにつながるというお話も印象的でした。その一方で、ビッグイシューを売りたいと訪ねてくるホームレスの方のうち5人中3人は、その日にいなくなってしまうそうです。それでも、来るものは拒まず去る者は追わずの方針なので気にしない。何度でもチャレンジできる場でありたい、敷居が低い場所でありたい。そして、このことをきっかけに居場所を見つけられるように寄り添っていきたいと明るく話す森さんの人柄も心に残りました。

実はお話を伺った日は休みの日で、ホームレスの方はいらっしゃらず。ホームレスの方がいるときにまたお邪魔したいという9年生。それでも今回の訪問で得るものがたくさんあったようです。彼女がどんな内容の論文に仕上げるのかが楽しみです。

そして、今回は、ガールスカウト群馬の方の訪問企画に混ぜていただき実現したものです。2人の高校生の思っていること、考えていることが聞けたことも刺激になったようです。森さん、ガールスカウト群馬のみなさん、ありがとうございました。



◇研究テーマ:「宗教戦争はなぜ起きるのか」/「宗教を信仰することはなぜタブー視されるのか」

「なぜオウム真理教は地下鉄サリン事件を起こしたのか」

埼玉県所沢市の宝泉寺(真言宗豊山派)を訪問し、色摩真了住職(卒業生)にお話をうかがってきました。色摩さんは、“仏教では、ものごとの原因・理由は一つとは考えず、さまざまな縁がからみあって成り立っていると考える”という仏教の教えを前置きに、生徒が事前に用意した質問について、一つずつ丁寧に答えていただきました。



◇研究テーマ:「刑務所」「教誨師」「死刑制度」

東京地方裁判所に9年生(中3)4名と裁判の傍聴へ行ってきました(霞ヶ関)。皆で相談して、810号法廷で行われていた傷害致死事件の審理を傍聴しました。

いわゆる裁判員裁判で、私たちが傍聴したときは、証拠品の確認や証人尋問が行われていました。裁判官・裁判員/検察/被告・弁護人の3者の間で交わされるやり取りは、まさに丁々発止、手に汗を握るような雰囲気でした。生徒たちは、普段はなかなか知りえない裁判の現場にふれて刺激を受けたり、検察側にわざと意地悪な質問をする弁護人に(そうとは知らずに)軽く憤ってみたりと、学び・感じるところの多い見学になりました。

生徒たちの研究テーマは、刑務所・教誨師・死刑制度など様々ですが、4人とも、司法関係をテーマとしている点で共通しています。まずは9月半ばの卒研中間発表会を目指して、見学の成果を活かして欲しいと思います。



◇研究テーマ:『里親制度、養子縁組、特別養子縁組。親子にとって最善の制度はどのようなものなのか』『なぜ子どもには家庭が必要なのか?』

保護者ボランティアの方の紹介で、東京外語大学を訪問。田島充士先生(心理学博士・学校心理士)にお話をうかがいました。



◇研究テーマ:『過激派組織「イスラム国」の実態とは?~イスラム教を背景に考える~』

保護者ボランティアの方の紹介で、東京外国語大学を訪問。飯塚正人先生(イスラム研究)にお話をうかがいました。



◇研究テーマ:『忘れるというはたらきに、何か意味があるのか?』『なぜ脳は100%使えないのか?』/『脳について』

保護者ボランティアの方が勤務されている理化学研究所脳科学総合研究センター(和光市)を訪問、ブレインボックスで脳科学分野のさまざまな研究成果を学ぶとともに、研究員の方には多くの質問に答えていただきました。



◇研究テーマ:『今の日本の安全はどこへ行ってしまうのか(安全保障政策)』

上智大学(四谷キャンパス)を訪問、樋渡由美先生(安全保障)からお話をうかがうことができました。「安全保障についてはさまざまな立場があるけれども、研究を進める上では多様な意見や考え方を聴いてみる方がいいよ」という卒研保護者ボランティアの方の紹介で、訪問が実現しました。生徒は6つほど質問を用意していきましたが、樋渡先生はゆっくり時間をかけて、一つずつ分かりやすく丁寧に答えて下さいました。世界の情勢を語るときは真剣な表情で、しかし生徒をまるでご自分の学生のように親しく接していただいたことが、印象的でした。


*次回に続く