「同人諸君」―赤井米吉
大草美紀(資料整備委員会)
同人諸君 (創立三年目の秋)
赤井米吉
我々の学園は、もともと現代教育の欠けているものを補い、誤れるものを正さんとして建てられたのである。正しく児童を教育しようとの考えであった。従ってそれは教育の改造であると同時に社会の改造を目的にして建てられたのであった。この根本的目的が我々の間に常に意識されているならば我々の学園の存立の意義は失われない。それはもとより容易な仕事ではない。我々の知と徳をもって完成し得られることができないかもしれない。然しこれを意識し、これに向って努力するその努力は、よしや不完全であっても、必ず大きな酬をうけるにちがいないと思う。
一粒の種子が地に落ちて育くまれることによって百倍千倍の実が実るように、我々の仕事はいつかは大きな結果を招来することにちがいない。若しこの精神が失われるならば、かくの如き小学園が一つ在るもないも、それは大した問題ではない。否かくの如き小さなものにこれだけの費用と人々の苦心を集める必要はない。むしろ無くなることが経済的にも精神的にも有利であるかもしれない。どうかこの根本的なことを凡てが意識して進んで欲しい。… 中略 …
国の前途を思い児童の将来を考え、同人諸君がこの使命感をもって立たれた人であることを固く信ずる。
国の経済の破綻、従って生活に対する不安を一日も早く取り除かねばならぬ。経済の破綻を招いた根本的なものは霊の堕落である。霊が朽ちたため産業も、経済も朽ちたのである。
我々の教育は実にこの財界さえ救済しようとしているのである。霊の復興を計る我々の任の如何に大であるかを考え、互にいましめ、互に助けあって、我々の負う責務を遂げたい。
明星学園の更生の秋である。同人諸君、内に省み、外を眺め、今一度猛然として立たれんことを切に望む。
1927年(昭和2)9月29日
「赤井・照井両先生 生誕百年誌」より