強く正しく朗らかに
「個性尊重」「自主自立」「自由平等」という学園の教育理念。これらの理念は、今となってはさほど珍しいものではないのかもしれません。しかし学園が創立されたおよそ100年前はどうでしょう。たとえば当時の公立小学校はクラスに70人近い児童が入る時代だったそうです。その中で「個性尊重」を教育理念として掲げていく難しさは想像以上のものであったでしょう。さらに国家の統制が教育現場にも及ぶ中で「個性尊重」や「自由平等」を謳うことは相当な困難があったはずです。そのような時代背景があったにもかかわらず、明星学園では「一人ひとりの児童を大切にする教育」を100年近く続けてまいりました。
自分の頭で考え、自分の心で感じ、自分で行動していくこどもを育てることは簡単ではありません。しかも一年生に入学したこどもたちの成長の過程や育った環境は様々であり、目の前のこどもたちは常に同じではありません。教師はこどもたちの未来のあるべき姿を考え、現状に甘んじることなく、最善を尽くす必要があります。我々はこどもたちにとって自覚的、自律的、自発活動的であり、創造的であるための教育と、それらから来る明朗で愉快な生活を目指すために、天分や素質といった個性を充分に尊重し、その上にそれぞれに即した指導を創案していくことが指導の原理だと考えています。
共同性は必要ですが、他人に寄りすがるのではなく、人に引きずられたりおぶさったりして歩く子にもしたくはありません。遅れてもいい、転んでもいい、教師の慈愛と激励の下にどこまでも自力で歩く子に育ってほしいと願っています。
入学したこどもたちは、また教職員は、「歩みをすすむれば近遠(ごんのん)にあらず」ということばが示すよう、理想に向かって歩みつづけることが大事であり、理想が遠いか近いかということは問題ではありません。あゆみはじめること、あるきつづけることが大切だと考えています。強く、正しく、朗らかに。