「魅力的なひとになる」

漫画家「土竜の唄」作者(保護者) 高橋のぼる
 
 二人の息子が明星学園小学校から中学・高校とお世話になっています。
 明星学園の何かお役に立てればと、妻は旗振り当番に行っていましたので、僕も何かしようと留学生を受け入れるホストファミリーに手を挙げました。ドイツから来た男の子を受け入れましたが、日本語が話せずコミュニケーションがうまく取れずにヘコみました。
 気を取り直して、2013年に9年生の卒業研究(卒研)のボランティアに参加しました。卒研のテーマは生徒が自分で自由に決めて良いので、僕は好きな事を仕事にする為にどうしたらいいのかについて生徒たちに話せたら良いと思いました。ロシアの文豪ゴーリキーの名言には「仕事が楽しみならば人生は極楽だ。仕事が義務ならば人生は地獄だ。」とありますし、孔子も「好きな事を仕事にすれば一生働かなくて済む」と言っているので、生徒たちには好きな事を仕事にして欲しいと願いました。
 そこで、好きな事を仕事にする為には「好きなことの円」と「得意なことの円」と「人を喜ばせる円」の3つの円が重なった所を職業にしたら良いと思ったのです。チョコが好きなら将来チョコレートショップを経営したらいい。ならば、卒研のテーマは「チョコレートについて」で良いと思ったのです。しかし、参加してみるとそう簡単な話ではありませんでした。
 どうしてかなあ、と悩んでいたら「好きな事を仕事にしている人間はほとんどいない」と友人から指摘を受けたのです。
 ならば、趣味は人生を豊かにすると思ったので、今度は趣味をテーマにしたら良いと勧めました。しかしそれもあまりうまくいきませんでした。 卒研ボランティアも4年目になると、生徒たちの興味の湧いた事についてやればいいのかなあと思い、なるべく生徒の意見を尊重してワクワクできるようなアドバイスをしていました。
 今、9年目になって、私も少し考え方が変わってきました。

 僕は2018年頃から大御所漫画家のゴルフ会「イージー会」に誘っていただき参加しています。毎月1回コンペをするのです。若輩者の僕は端っこの席で大御所をじーっと見ます。藤子不二雄Ⓐ先生、さいとうたかお先生、ちばてつや先生、永井豪先生・・・巨匠たちの姿を見ていると、なんて魅力的な人たちだろう・・・と、愕然とするんです。
「人間的魅力に溢れている!」
 漫画家の中にはとても才能があるのに嫌な先生もいます。誰にも好かれない、みんなに嫌われている先生もいらっしゃいます。技術的には高いのですが・・・。
 でも今、目の前でゴルフを一緒にしている先生方は、ただただ、人に好かれている。無理もしていない。明るく楽しく生きている。 何度も会って見ていると、人を喜ばせる事を目的にしている。まるで「人を喜ばせ合戦」に参加しているかのようでした。
 お金や物より、もっとあげると人が喜ぶもの、そして減らないもの。そう!与えているのは“元気”だと気づきました。
 人を喜ばせれば魅力的な人間になるか?・・・なる!

 僕は、成功するには才能が二つ必要なのではないか?と考えています。ひとつは技術的な才覚能力。もうひとつは人に喜びを与えることだと思います。
 人間の魅力とは何か?それは人の心を惹きつけて自分を好きになってもらう事です。人生は自分のファンを増やしていくゲームだと言う人がいます。クラスメイトに嫌味を言ってはいないだろうか?傷つく言葉は言ってはいないだろうか?
 魅力的な人間になるのは、実はそんなに、難しくないのです。
 クラスメイトを褒める!優れているところを的確に褒めたらいいんです。友達が落ち込んでいたら励ます!誠実に!!あなたの行動が他人に影響を与える事を知ればマイナスな言葉をかけるか、プラス思考な言葉をかけるか、考えられるようになるはずです。
 幸運は陽気な人に向かっていきます。友人を笑顔にさせることが出来れば、あなたは魅力あるひとです。魅力あるひとのまわりに人は集まってきます。魅力のないひとからは、人々は遠ざかっていきます。 良い種も悪い種も、自分が蒔いたものを刈り取るのが人生であるのだから。 生徒たちが、魅力的な人間になりますように・・・。
 元気を与え、人に好かれる人望という才能を持ち、明星学園の生徒のみなさんには幸福な人生を手にする事を願ってやみません。

高橋 のぼる
【プロフィール】
 高橋のぼる

1964年11月8日生まれ
楳図かずおのアシスタントを務めたのち
1998年ビッグコミックオリジナル増刊(小学館)掲載の「強引’マイウェィ」でデビュー
2005年8月より「土竜の唄」を連載開始
2014年 第59回小学館漫画賞一般向け部門 受賞
監督:三池崇史 脚本:宮藤官九郎 主演:生田斗真により
2014年、2016年、2021年に実写映画化される。
土竜の唄は現在も連載中
他にビッグコミックにて中国史劇「劉邦」とグランドジャンプで「最強の弁護士」を連載中