「何これ~?」を見逃すな!

映像カメラマン 柳瀬雅史 (卒業生 51回生)





 まずは創立100周年おめでとうございます!
 すごい! 100年はすごいですよね! よく考えるとそこまで有名でもなく、お金がすごいある感じでもなく、よく続いてきましたよね!
 それは思うに、ここを出た人たちが「やっぱりここは無くしちゃダメなんじゃないの?」 って思うからなんでしょうね。そう思う人がちょっとずつでも増えているんでしょうね! はい、僕はそう思います。

 自己紹介しますと、僕はフリーランスの映像カメラマンをしています。
 主に自然番組などを中心に撮影しています。最近はドローンによる空撮もやるようになり、ますます映像作品を創ることを楽しんでいます!

 
柳瀬さんにはドローンで明星学園小中学校・高等学校の
上空写真を撮していただきました。


 僕は東京都練馬区の普通の小学校を経て明星学園中学校に入学し、中学・高校と明星に通いました。最初は内部(小学校)からの生徒たちに面食らいました! 変わり者だらけって感じで、特にその関係性が独特で‥‥ 「なんだ? コイツら」って思いました。男女で下の名前で呼びあったりするところなんか少し嫉妬したりして! でも少ししたら「自分とそんなに変わらないか!」って思えるようになり、気づいたら溶け込んでいました。

 大人になって振り返ると、明星の友達の多くは他の人とは明らかに毛色が違うなと感じます。言葉にするとしたら〝ハッキリと個を持った、人のいい変わり者〟かな。
 この〝ハッキリとした個を持つ〟というところが大事なんですよね! それは資質でもあり、個性でもあり、環境によって育まれたその人のキャラクターでもあると思います。
 そしてさらに大事なのは、その〝個〟を認めて受け入れることなんだと思います。(まあ口で言うのは簡単なんですけどね。今の若い人は‥‥ なんて言うつもりはありませんが)
 そんでもって、その変わり者と一緒に何かをしたら、なんかすんごい面白いことになることもあるんですよね!

 今も付き合っている明星の仲間には、何か他の人とは違う温度というか、匂いというか‥ ホッとする温かいものがあります。幼なじみという言葉だけでは説明ができない、何かホワッとした何かですね。上手く説明できませんが、そのホワッとした何かが、きっと明星学園にはたくさん詰まっていたんだと、今振り返って強く思います。

 変えようがない自分をさらけ出しても、周りが何となくそれぞれのやり方で受け入れてくれる! そう! 変えなくていいんだってこと。これ、凄く大事なことかもです!
 そうなんです! みんなちょっとずつ違うんですよね!
 当たり前なんだけど、でもそれを何となくそれぞれのやり方で認めて受け入れていく!ん〜、何か深いことを言ってる気がするのは気のせいです! そう出来ることが当たり前なんですよね、きっと。当たり前じゃなきゃいけないんですよ!!

 で! 先生たちもキョーレツだった!
 先生たちも自分を変えられない人ばっかり! 教室でお餅焼いて食べたり、雪の日は授業をやめて雪合戦! 何年もかけてログハウス創ったり、自分で設計した椅子創ったり、嵐の中山登りしてヘロヘロになったり‥‥‥ めちゃくちゃ楽しかった!
 今思うと、先生たちからしたら子どもたちの反応や成長を楽しんでいたのかな?
 そら面白いだろ!

 高校に入ってからはバスケ漬けの3年間でしたが、真面目に打ち込むことが出来たのは、やはり信頼出来る先輩と苦楽を共にした仲間がいたからですね。皆変わってましたが!
 この頃の人間関係は未だに続いています!

 中学・高校の6年間にたくさんのことを吸収して学んだと思いますが、それが今の仕事に繋がっているかと言えばNOです。
 でも、好きなことに触れた時にビビッと感じて「これかも!」って思って突き進むこと
好奇心を抑えないこと! これはやはり明星で培ったものかなと思います。それは中学・高校ぐらいの年頃にはすごく大事なことだと思います。

仕事の話を少し。
僕の父親はテレビのカメラマンでした。
子どもの頃に仕事で海外によく行く父親を見て、すごく興味をそそられました。
 僕が高校生になった頃から、ときどき休みの日に撮影現場に荷物持ちの手伝いで行くようになり、やがてはこの世界に入ることをなんとなく決めていました。
 当時父親はドキュメンタリー番組の撮影が多く、僕も手伝いでいろいろな現場に行きました。
 築地市場の仲買人の仕事ぶりや、芸者さんの稽古の日々、東京湾埋め立ての現場等など。 さまざまな職業の人たちの仕事を覗き見できたのはすごい刺激になりました。世の中には本当に多種多様な生き方をしている人がいるんだな〜と!
 そして、それらを切り取って作品として世の中に紹介する映像の仕事が、僕にはとても魅力的に思えたのです。まさにどの現場も「何これ〜?」の連続で興味はつきませんでした。
 そして今、いろいろと経験して自然番組を多く撮影するようになったのですが、生き物・植物・昆虫と撮影していく中で、未だに「何これ〜?」「おもしれぇ〜!」はほぼ毎回撮影のたびに経験出来ます。僕が物を知らないだけなのですが、ホントに毎回ワクワクしてます。面白い世界ですよ〜! 是非!



 好奇心は全ての始まりです。「何これ〜?」で始まり「おもしれ〜!」でのめり込んでいく瞬間! これが何かの始まりなんです! きっと! それを見逃しちゃダメなんです! そしてそれは大人になっても訪れるかも!
 そんなことを強く思います。そしてそんな好奇心旺盛な子どもをそっと見守って欲しいと思います。そんな子どもにヒントを投げ続けて欲しいです。

 子どもの頃、何かに夢中になっている大人は常に魅力的だったことを覚えています。「それってそんなに面白いの?」と聞くと、満面の笑みで楽しそうに写真の撮り方を教えてくれた父親。豪速球を投げる憧れの友達のアニキ、釣りがむちゃくちゃ上手い親戚のオジサン、皆キラキラしていました。そんな人たちに教わるときのワクワクは今も忘れません!
 好きを止められない、自分を変えられない大人は、子どもにとってすごく輝いて見えます。そんな人に何かを教わりたいはずです! そんな人に引っ張ってもらいたいはずです!
 そんな人に自分もなりたいものです。
「何これ〜?」がたくさんあって、好きなことを見つける才能があれば、あとはそれをやり続けることができるように考えればいいのです! 好きなんだからできるはずです!
 そしてそれは仕事に、生き方に、繋がるのかもしれないですよね。
繋がらなくてもいいじゃないですか! 死なない程度に仕事でお金がもらえれば、好きなことに集中できる時間は作ればいいんです! 変われなくても、カッコ悪くても、キラキラした人になってください!

 僕自身、まだ目標に到達できていませんが、それまでの道のりをあれこれ考えるのも悪くないです。
 子どもも大人も「何これ〜?」の瞬間を見逃さないでください! きっと何か見つかるはずです!




柳瀬 雅史

【プロフィール】
柳瀬雅史

1965年東京生まれ。
練馬区の公立小学校を卒業して1978年明星学園中学校に入学。
1984年明星学園高等学校卒業。
1988年和光大学卒業後、鞄手帳のメーカーに2年半ほど勤務後、24歳で転身。
27歳で独立し、フリーのテレビ映像カメラマンとなる。
以降、ドキュメンタリー番組等を経て、自然番組を中心として奮闘中。
現在、NHK『ダーウィンが来た!』『ワイルドライフ』『さわやか自然百景』などの番組で撮影を担当することが多い。

【近年の撮影番組】
・ ワイルドライフ「南米ウルグアイ 育メン巨鳥レア 大牧場の子育てに迫る!」(2020年4月放送)
・ ワイルドライフ「アフリカ オカバンゴ大湿原 リカオン 驚異の狩りの秘密に迫る!」(2020年10月放送)
・ ダーウィンが来た!「野生のイヌ ディンゴに密着!」(2018年6月放送)
・ ダーウィンが来た!「新生活様式!?群れるチーター」(2021年5月放送)
・ ダーウィンが来た!「街に大進出!青い鳥の謎」(2021年10月放送)
・ ダーウィンが来た!「最強軍団!オオスズメバチの真実」(2022年5月放送)
・ ダーウィンが来た!「撮ったぞ!激レア 世界最大のチョウ」(2023年7月放送)
・NHKスペシャル「明治神宮 不思議の森~100年の大実験~」(2015年5月放送、DVD販売中)