中学校
この人に会いたい(特別授業)
【9年生この人に会いたい】映画監督 草場尚也さん 『生きた学校を撮る』― 映画「雪子 a.k.a.」に込めた想い ―
1月30日、9年生を対象に講演企画「この人に会いたい」を実施し、映画監督の草場尚也さんをお招きしました。
草場さんの劇場用映画初監督作品である映画『雪子 a.k.a.』は、29歳の小学校教師・雪子がラップを通して自分自身と向き合い、答えを探していく姿を描いたヒューマンドラマです。
本作の撮影では、主人公が勤務する小学校のロケ地として明星学園小学校が選ばれ、校内での撮影が行われました。
「生きた学校を撮りたかった」と語る草場さんは、残念ながら本校で職員室の撮影がかなわなかった際にも、セットではなく実際の職員室を求めて静岡県の学校まで赴き、撮影を行ったエピソードを紹介してくださいました。
講演では、2021年から始まった草場さんご本人からのアプローチによって実現した撮影の経緯や、明星学園との出会いについて語っていただきました。当時を振り返り、小学校の伊野副校長からは「草場さんの飾らない人柄に惹かれた」という印象があったことも紹介されました。
また、映画は一人で完成できるものではなく、企画を担うプロデューサー、物語の細かな設定やセリフを形作る脚本家、音声や照明など多くのスタッフとの協働によって制作が進められること、制作の過程では意見の相違や課題が生じることも少なくないというお話もありました。その中で草場さんは「監督も正解を知っているわけではない。時に飲み込み、時に説得することが大切」と語られました。例えば、主人公の名前「雪子」は当初「夏生まれの雪子」という構想であったものの、撮影スケジュールの都合から「冬生まれの雪子」へと変更されたことや、雪の降るシーンの撮影には多額の費用がかかることなど、作品づくりの裏側についても具体的に紹介されました。次回の監督作品は『雪子 a.k.a.』の約10倍の予算が組まれているとのことでしたが、「予算があれば良い映画が撮れるわけではない。それが映画の面白さでもある」と語られていた言葉が印象的でした。
また、本校の児童生徒が映画に出演したエピソードや、音楽室で大型機材を使用して撮影を行った際の苦労話など、ここでしか聞くことのできない貴重な裏話も披露されました。
さらに草場さんが映画を作るにあたり、自身の生い立ちが大きく影響していることがうかがえました。もともとは社会科の教師を志して大学で小学校教員免許を取得していたこと、アクションやSF映画よりも「心を揺さぶられて泣ける物語」を好んでいたこと、長崎県出身であること、大学時代にヒップホップに親しんでいたことなどが語られました。こうしたさまざまな経験や興味が重なり合い、「教師×ラップ」という異色にも見えるテーマでありながら、29歳の小学校教師・雪子という主人公に多くの場面でリアリティと共感を生み出すキャラクター像が形づくられていったことが紹介されました。
講演の中で草場さんは、次回作としてご自身が中学・高校時代に取り組んでいた「剣道」をテーマにした映画の構想についても触れられました。当時は嫌々打ち込んでいた剣道も、大人になって振り返ると自分を形づくる大切な要素の一つであったといいます。また、得意なものを題材にすることで、自信を持って作品づくりに向き合うことができるとも語られていました。
「中高時代に無駄なことは一つもなかった」という言葉には、何気ない日常の一瞬一瞬が、やがて自分の輪郭を形づくっていくのだという、静かなメッセージが込められていました。
今回の講演は、生徒にとって映画制作の裏側を知る貴重な機会であると同時に、自分自身の興味や経験を見つめ直すきっかけとなる時間となりました。
最後に『雪子 a.k.a.』を鑑賞した学年の教員から頂いた感想を紹介します。
わたしたち教員は人間扱いされていない部分があると思っています。
それは尊敬の念を向けられた時でも、馬鹿にされたときでも感じることです。
先生と呼ばれる限りは、生徒たちは、保護者たちは、同じ教員でさえも
「先生なんだから」という言葉でわたしに出会い、くくり、縛ろうとします。
古い童話集に、子どもたちが先生に大きな恥をかかせてしまう話があります。
そのとき「先生だって人間なんだぞ」と教室で先生が大声で叫ぶのです。
今でもそれがわたしのなかに残っています。
先生は、実は先生というぬいぐるみをかぶった人間だということ。
そこには泣いたり笑ったり、悩んだり、悔しかったり、嫉妬したり、
苦しくなって、うれしくなって、自分を何度も何度も立て直して、
裏の顔とされてしまう表の顔があるということ。
でも、次の日には、笑顔で子どもたちの前に立ってしまうのです。
先生であることを一生懸命に生きているのです。
そういうわたしたちのすべてではない一部をみなさんに
知っていただける映画だと思いました。
9年生担当