卒業式 校長祝辞

昨年の春、転校生のような新米校長の私を、皆さんはとても暖かく迎えて下さいました。僅か1年間の交流でしたが、とても感謝しています。

共に訪れた修学旅行の沖縄平和記念資料館での真剣に当時の悲惨な記録を見つめる皆さんの様子、学校説明会でさわやかに学園の自治活動を紹介して下さる姿、運動会でのリーダーシップ、そして合唱祭でのまっすぐな歌声、どの場面をとっても立派な、誇らしいものでした。

さて、先日それぞれの元に届けられた学園報の中に、総合探究科を中心になって支えて下さる新坂先生による活動報告があります。その中の「私は常々学校があるから学びがあるのではなく、学ぼうとする人たちがいるから学校があるのだと思っています」という一文は、学園の4人の創立者が新たな教育を求めて奔走し、新たな「自由」という理想に惹かれた人々の子供達20名と共にスタートした100年前の姿と現在の学園の営みがしっかりと結ばれていることを表す、まさしく今の活動を支える教員の言葉だと思います。7年生から段階を追って学び、積み上げてきた学園の総合探究活動は、創立時から今につながる大切な活動です。

この2月、探究活動をまとめた研究論文の発表は、興味関心を一つの形に仕上げるそれぞれの冒険や挑戦を含む新しい経験でした。

そして、個々の研究テーマに向けて、意見を押し付けず、興味を伸ばすように寄り添い、サポートして下さった保護者の方々の存在は、生徒と学園にとって、なくてはならない存在でした。「面白い」に共感しながら、一人一人と出会い、励まし、豊かなヒントを身振り手振りを交え、本気で付き合ってくれた社会の中で生きる魅力的な方々です。

また、学年の先生方の、いつも優しく懸命に、皆さんを支える姿も印象的でした。沖縄の地元の民家にお世話になり宿泊し、共に生活する体験では、皆さんの様子を車で巡回し、本来、遠目からそっと見守るところを、畑仕事をしていると、つい飛び出して行って生徒と共にとれた芋を手に写真を撮って嬉しそうにする先生方の姿に、私は、本当に9年生の皆さんの事が大好きなんだなぁと、感心しました。教員という職務からではない、人生の先輩としてあなたたちを、この学年の先生たちは愛おしく思い、大切にしていたと思います。

今日、義務教育を終え、新たに進む明星学園高等学校の過程では、もう一度、新たな気持ちで友人と集い、楽しく豊かな、自発的な学びの中で、生き生きとした学園を作る役割を担って下さい。そして、他の学校に進学する生徒には、これまでとは違う価値観や制約にも身構えず、自身の選んだ道の中で、明星学園で得た、あなたのしなやかな思考や価値観を大切にしてください。

私は今日、卒業生を送り出す教員の代表としてこの場にいますが、一方では、この3年間で力強く成長したあなた等新入生を迎える、新たな高校という舞台の準備を先生方と共に進めています。

高校教員の、生徒との接し方に皆さんは、対応がクールと感じ、距離感が掴めず、戸惑う事もあるでしょう。より大人に近づいたあなたと接する時、私たちはいつも仲良しで、単に受け入れるだけではいられません。しかし、生徒の学びを支えようとする基本的な姿勢は同じです。各教科の専任と講師を合わせると100名程になる教員との関係の中にも新しく豊かな出会いが待っています。楽しみにしてほしいと思います。

これまで皆さんは、各教科の授業において、新たな知識や思考をノートにじっくりとまとめて理解する中で多くの事を学んできました。しかし、高校へ進学し、その先の大学という過程の中には、「受験」というハードルがあります。その中で、知識を効率よくまとめた教科書を、合理的に習得し、要領よく点数をとり合格するという事は、一定必要です。しかし、その事だけに価値を置けば、同時にあなたは「面白い」と感じる気持ちを失ってしまうことのように思います。

今日、体育館の壁一面に飾られた美術や木工の卒業制作一点一点を丁寧に鑑賞する人々の目は、単に上手に描かれた建物や人物に感動するのではなく、あなたが「面白い」と思う対象を見つけ、試行錯誤しながら伝えようと意欲的に制作した人物の表情に浮かぶ感情や、思想を表す色や形に惹かれ、共感し、心が揺さぶられるのです。大切なのは、上手に人生を渡ることではなく、情熱的に学び、経験することです。いい子を演じる競争には、参加しなくて良いと思います。ルールやガイドラインに頼って知識だけを詰め込み、自分の頭で考えることを放棄しないでほしいと願っています。

卒業生の皆さん、改めて本日は、明星学園中学校のご卒業おめでとうございます。4月、高校の入学式で、お互いに新鮮な気持ちで会いましょう。楽しみに待っています。保護者の皆様、これまでのご理解とご協力に感謝すると共に、ご子弟のご卒業お祝い申し上げます。また来賓の皆様、本日はご列席いただき誠にありがとうございます。 以上、中学校の教員を代表し、私からの祝辞とさせていただきます。

2026年314日 明星学園中学校長 山領直人

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