明星学園

トピックス(小学校)

お知らせ

父の日の贈り物

校長だより
校長 福田 純一

 大阪では大きな地震があり、亡くなった方、被災されて避難所生活を送られている方も多数あります。23日にはPTAの安全点検も行われ、いつもよりも厳しい目でチェックして頂きました。

 さて、今回は、久しぶりに私の「みいつけた」をご紹介しましょう。
 6月17日の日曜日のことでした。珍しくこの日は何の予定もなく朝から自宅でのんびり過ごしていました。10時頃だったでしょうか。玄関のところで、どうも鳥が騒いでいる様な気配がしました。そうっと扉を開けてみると、木の手すりの所に一羽のカラスがいます。何の気まぐれかなと、しばらく様子を見ることにしました。部屋から窓越しに眺めてみると、くちばしの周りがほんのり赤く、体も一回り小さく、あどけない表情をしています。左側の羽が折りたためず、どうも羽を痛めている様子です。そばの電線には、もう一羽別のカラスが警戒心をむき出しにして、様子をうかがっています。
 「ははあ、これはカラスの幼鳥だ。巣立ちの頃だから、巣立ちに失敗して羽を痛めてしまったに違いない。電線にいるのは、親ガラスだ。」
 早速、三鷹市の獣医師会に連絡を取ってみました。すると、
 「そのまま放置してください。または、行政に連絡してみてください。」
 「行政って、市役所ですよね。処分と言うことですか?」
 「それは、まあ、市役所の方で判断すると思いますので…」
 私は、受話器をねじる様にして置きました…。あのあどけない表情を見ていると、何とかしてやりたくて仕方がありません。でも、専門家の言うことですからむげには出来ません。そんなことを考えているうちに、子どもの頃の遠い記憶がよみがえりました。

 確か、小学生の頃、野鳥を保護したことが2度ありました。一度は、スズメ。もう一度はシジュウカラです。スズメの時は、お向かいの家の植木に巣があり、巣立ちに失敗して、道路で鳴いていた幼鳥を巣へ戻しました。幼鳥がいた地点と巣が結構離れていたので、巣を探すのが大変だったことを覚えています。シジュウカラの時は、雛が巣から落ちてしまったようでした。雛と言っても体は大きく、見た目には親鳥と区別ないくらいに育っていました。かごに入れ、窓のそばに置いたところ…、なんと親鳥が窓の隙間からそうっと入り込み、えさを運んで来たのです。気付かれない様に隠れながら、一日中眺めて過ごしました。数日後、学校から帰ってくると、その雛はぐったりとして動かなくなっていました。あの状況で放って置いたら、野良猫に襲われていたに違い。仕方がなかったんだ、と自分に言い聞かせました。

 その日は、幸いそれほど暑い日ではありませんでしたから、そのカラスをそうっと見守ることにしました。近所へ出かけるために玄関を通るときも、目を合わさずに、背中を向けてそうっと通りました。夕方になっても、まだ動きません。左の羽もまだ、たためていないままです。辺りが暗くなっても、依然としてそのままです。外灯がまぶしいといけないのでその日は付けずにいました。窓からのぞいてみると、幼鳥はくちばしを背中に埋める様にして、足をたたみ、うずくまる様にして寝ています。水鳥などではよく見かけますが、カラスもこうした姿勢で休むことを初めて知りました。

 翌朝、5時頃目が覚めたので、窓をのぞいてみると、そのカラスがいません。外へ飛び出て、周りの植え込みを見てみましたが、見当たりません。羽が散乱している様子は、ありませんでした。どうやら、無事に飛び立ったようです。

 カラスは、ゴミを散らかしたり、畑を荒らしたり、鉄道の線路に置き石をしてしまったり、子育ての時期などやたら威嚇してきたりと、人間にとってはやっかい者です。でもその反面、とても賢く、人の見分けも出来ると言われています。昔、犬の散歩をしている頃、ある場所を通過するたびに一羽のカラスが飛んできて挨拶してくれる様になったことがありました。学校の池(通称川のところ)にも一羽のカラスが居着いていています。カラスは、黒いですが、その羽の色は深みのある藍色をしていて、とてもきれいです。歩いている姿も愛嬌があります。
 突然の珍客、忘れかけていた気持ちを思い出させてくれた何よりの贈り物でした。