明星学園

2023年度

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『教科教育が担うものとは』


ご挨拶 ~2023年度公開研究会にあたって~
 今年度の公開研究会は「教科教育が担うものとは」というテーマに決まりました。
この数年、明星学園として大切にしていることとアクティブラーニングやSTEAM教育などの繋がりに視点を当ててきました。総合探究的な教育の重要性を研究してきた結果です。勿論それは間違っていたわけではありません。しかし、総合探究的取り組みがこの学園で成果を挙げているのは、元々の教科教育が学問や芸術の本質的な内容に重点を置き、探究的な授業を通じて実践し続けてきたからこそなのです。
 その意味で、明星学園の教育の真髄は間違いなく教科教育にあると言えるでしょう。
教科の研究を通じて、何を・どの様な順序で・どの様にアプローチして教えるか を目の前の子ども達に寄り添いながら検討し、授業づくりに結実していく取り組みこそが、この学園の太く強固な柱なのです。
 その教科教育に視点を当てた公開研究会を開催できることをとても嬉しく思います。来年100周年を迎える明星学園の長い歴史の中で、子どもたちと常に向き合い、同僚の先生たちと共同して開拓し続けてきた各教科の実践は、この学園の財産です。こうした実践には学内外の皆様からの忌憚のないご意見やご批判が不可欠です。
今年は3年ぶりに対面型で実施できることになりました。ご参加いただける方々と対等に意見交換をさせていただける幸せを噛みしめたいと思います。


明星学園中学校・高等学校校長 平野康弘

期日

2023年11月25日(土)8:00(受付開始)〜16:30
【受付】  8:00〜
【1校時公開授業】小 8:50~9:35 / 中 8:45~9:35
【2校時公開授業】小 9:50~10:35 / 中 9:45~10:35
【全体会】 10:50〜12:30  場所:いちょうのホール
【分科会】 13:30~16:30

※昼食は各自ご持参ください。学校周辺にはコンビニが1軒ある程度です。

参加費・参加方法

◇参加費:1,000円 (※当日、受付にて現金でお支払い下さい。後日、報告集をお届けいたします。)
◇参加方法:事前申し込みは終了しました。
      当日に参加をご希望される方は、受付にて指定の用紙にご記入の上、お申し込みください。
内田樹氏の全体講演については、座席数に限りがあるため、立ち見、もしくは入場をお断りせざるを得ない場合があります。何卒ご承知おき頂ますようお願いいたします。)

全体会


     
特別講演

内田 樹 氏

[講師プロフィール]
武道家、思想家。1950年、東京都生まれ。神戸女学院大学名誉教授、昭和大学理事。東京大学文学部仏文科卒業。東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程中退。『私家版・ユダヤ文化論』(第6回小林秀雄賞)、『日本辺境論』(第3回新書大賞)、執筆活動全般について第3回伊丹十三賞。2011年に哲学と武道研究のため私塾「凱風館」開設。近著に『レヴィナスの時間論』、共著に『大学と教育の未来』 『下り坂のニッポンの幸福論』など多数。


分科会

① 小学校 総合
「低学年教育における ものづくり」
 人間としての機能、手や足や体を使って「もの」を創りだす能力を、子どもたちに身につけさせたい。対象・物自体に学ぶという「観」を教えたい。できればにっぽんの伝統的文化の中にある原始的ではあるが、生活の中に根ざしてるものを扱い“にっぽん”の文化の中に潜むものを心の中に育てたい。(明星の教育2号 1979年)
 この様に考えて、明星学園では1970年代に1・2・3年生で「ものつくり」を始めた。それから科学教育研究協議会に学び、さまざまな試みを経て「ものつくり」は現在以下のねらいをもって総合の7分野の一つになっている。
「ものつくり」のねらい
1.動く原理やしくみをとらえる
2.手と頭を結びつけ、道具を使って物をつくるたくみな手をつくる
3.対象にはたらきかけることで、対象の性質を知る
4.自然をくらしの中にとりいれる
5.生産の原理的なしくみを知る
6.工夫したり発表させたりする
 今回の研究会では、人間形成の土台作りといえる小学校低学年においてのものつくりのねらいを再認識し、それぞれの単元の意義を理解し、授業を作ることを目指す。
 さらに、低学年教育で大切にしていること、「五感を働かせ、ものごとを認識していくこと」「ものやことをとらえ、言語(絵、図を含む)で相手に伝えること」をものつくりの授業においてどのように実現するかも同時に検討していきたい。

共同研究者:伊藤廣子 高橋真由美
司会:本校教諭

② 小学校 算数
「生活から数の世界・そして数の世界から生活へ」
 明星学園小学校算数部では、これまで≪内包量≫と≪比例≫をつなげて学習しています。それは≪内包量≫を表すための方法として≪比例≫があると考えるからです。例えば、チョコレートに含まれるカカオの量(含有率)は〔カカオの分量÷チョコレートの量(全体量)〕によって数値化することができます。ここまでの学習が1つの目標となりますが、その先まで見えるように学習を組んでいます。数値化されたものをグラフ化することで、より子どもたちは、その数値の持つ意味を実感できます。描かれたグラフからチョコレートの苦みやどちらの方が苦いというような感覚を感じ取ることができるようになります。このような学習を組みます。
 高学年になってくれば、徐々に現実世界のモデルを精緻化できるようになり、そう考えれば、具体的な事柄を数の世界に変換するだけでなく、逆に数の世界で表されたことを具体的な事柄(生活実感)に変換することも可能になります。そして、このような学習を組み込むことで、「なぜ算数を学ぶのか」の1つの明確な答えにもなるのではないでしょうか。
 今年度はこれまでの実践を改めて検討し、より子どもたちが数の世界を学ぶ意味を感じ取れる実践にしていければと考えています。また今回は明星学園中学校数学科の先生方にもご意見をいただきながら検討を進めていきます。

講師:正田良(成蹊大学非常勤講師)
司会:福田純一(本校教員)

③小/中学校 理科
「運動力学をどう教えるか(単元:力と物体の運動)」
 本校では、力学分野として7年次(中1)には「2力の合成・力のつり合い」、8年次(中2)には「エネルギーの保存・変換」を学んでいます。そして 9 年次(中3)の『力と物体の運動』は、この2つの単元をつなぎ、統合するような内容です。ここでは力の有無や大小が、物体の運動としてどのように現れるか、つまり力を“物体に対する運動の変化の原因“として捉えさせます。
 この単元の大きな目標は、物体の運動の基本となる「等速直線運動」と「物体に力が加わることで生じる加速度」について理解させることです。
 本校では工夫した教具を活用して、これらの学習を深めていく課題系列をつくりあげています。是非、ご検討ください

講師:田中篤司(東京都立大学)
司会:阿久津嘉孝(都立拝島高等学校教諭)

④中学校 国語科
「対話を生む発問とは?」
 
新学習指導要領の改訂に伴い、「主体的・対話的で深い学び」が提唱され、「情報活用能力」なるものが教育現場に今求められている。では、そのような力はどのようにすれば育んでいくことができるのだろうか。教育システムの表面を変えるだけでは、本質的には何も変わらない。本校の国語科は長年にわたり生徒の初発の読みを大切にしてきた。教員との一問一答ではなく、生徒一人一人の意見の違いを自分自身で気づき、テキストを根拠に説得力ある説明ができる力を育むことに努めてきた。それは何でもありの読みを許容するものではない。一つの言葉に着目する読みでもある。そのような授業を展開するうえで要となるのは「問い」(発問・課題)である。今回は7年(中1)『形』(菊池寛)、9年(中3)『猿ヶ島』(太宰治)の文学作品の授業を参観していただきながら、この「問い」の持つ可能性について考えていきたいと思う。

講師:佐野正俊(拓殖大学外国学部国際日本語学科教授(元ICU高校教諭))
司会:堀内雅人(元本校中学校国語科教員)

中学校 社会科→中止になりました。
「東アジアのなかの日本の近代化」
 グローバル化にともなう世界情勢の変化、インターネットや人工知能の発達などの背景のなかで、子どもたちに必要な教育の在り方が問われている。そうしたなかで歴史教育はどのような役割を果たしていくべきか考えていきたい。世界の歴史において、近代化がもたらしたものと、現代社会に存在する課題は密接に関わっている。子どもたちと世界と日本、特に東アジアに着目しながら、近代化の波が社会にどのような影響を与えたのか、そしてその時代の個人にとって近代化はいかなるものであったのか。9年生(中3)の子どもたちと共にどのように認識をつくっていくのか考えていきたい。

講師:三橋広夫(淑徳大学非常勤講師)
司会:繁田真爾(東北大学研究員)

⑤中学校 保健体育科
「物をより遠くへ投げるための効果的な技術的指導について〜理論と実践〜」
 現在明星学園中学校では、7年生(中1)で週3時間、8年生(中2)、9年生(中3)で週2時間体育の授業を行っている。その中で陸上競技の種目において、7年生では短距離種目(50m走、ハードル走)8年生では跳躍種目(走高跳)、9年生で投擲種目(ジャベボール投げ)を実施している。
 明星学園では、毎年4月の上旬に体力テストで50m走とハンドボール投げを実施しているが、投種目においては記録の低下傾向が見られる。この背景としてボールを投げる環境が減少していることや、コロナ禍における外での運動活動の制限が考えられる。
 明星学園では投動作を指導する際に、「初速(スナップ)、投射角(投擲物と身体の角度、テイクバックの姿勢)、空気抵抗」を基に指導を行っている。週2時間で一つの学期という限られた授業数のなかで、基本的な投動作の指導と実践を行なっているが技術の定着をするまでに至っていないのが現状である。特に課題として挙げられる動作は、「投射角の維持」と「テイクバックの姿勢」である。この課題を改善するためにも実技指導だけでなく、投動作の局面構造と身体構造の理論を理解させるための座学の実践も重要と考えている。このカリキュラムについて、実際にどんな授業を展開しているのか現状を報告し、様々な視点でご意見をいただき、今後の授業に活かしていきたい。

講師:田島直樹(東京都立芦花高等学校保健体育科教員)
司会:森村卓(本校教員)


要項

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お問い合わせ先

公開研究会事務局:小畑典子(中学校)
教務事務:小林枝里子
TEL:0422-43-2197