明星学園

2022年度

2022バナー


『私たちが目指す授業とは』


 あと2年で創立100周年を向かえる明星学園では、常に「研究」というものを大切にしてきました。
 100年前に絶対主義的教育目標とその実現を目ざす前近代的な画一主義の注入教授、とりしまり主義的訓練等に対して批判していくことは、並大抵のことではありません。しかし明星学園の創立同人である赤井米吉は、「その新たなる教科課程は従来のそれの如き厳格なる鐵鎖であってはならぬ。土地に応じ、学校に応じ、又児童個人に応じても可柔性あらねばならぬ。」と、それまでの教育とは違った道を模索し始めました。
 我々が重要視しなくてはならないのは教育の「方法」と「内容」です。
「方法」については時代の流れとともに「受動的注入」から「主体的思考」へと変わってきました。さらに我々は学校を「教化」のための機関ではなく、生活・学習の共同体、つまり教師も子どももお互いに刺激し合い、共に学んでいく場であるとも考えています。
 そしてその教育の「内容」もまた、目の前の子どもたちの現状に即して考えられなければならないものです。ドルトン・プランの翻訳を手がけた赤井米吉ではありましたが、結果から言うと、赤井はこの案のもつ精神から、そこに多くの善きものがあることを認めつつも、明星学園において全面的に実施することを躊躇しました。その理由の一つは、このプランが教育の内容について語らず、学習の方法・形態の変革のみを問題にしている点にあります。赤井はこの学園において、教材研究こそ起こすべきだと考えていたのです。
「方法」についても、「内容」についても、重要なのは、教育の科学的研究であります。そしてその「研究」は実際に授業を行ってそこから立ち表れる課題を見出すことによって行う研究であるはずです。
 明星学園では1960年代から、その研究を客観視するためにも「公開研究会」を開催してきました。
 今年度もコロナ禍の中の公開研究会、オンラインという形となりますが、皆様とともに研究をできる場があることの喜びを感じます。どうかそれぞれの分科会では、忌憚のないご意見を頂戴できればと存じます。

明星学園小学校校長 照井伸也
▶︎参加者ページはこちら
※メールにてお知らせしたユーザー名(ID)とパスワードが必要になります

期日

2022年11月26日(土)
10:00〜  全体会(事前録画した特別講演をYouTubeにて限定公開いたします。) 
13:00〜15:30  分科会(Zoomにてリアルタイムで行います。)

参加費・参加方法

◇参加費:1,000円(※後日、報告集をお届けいたします。)
◇参加方法: Peatix(外部サイト)よりお申し込みください。
◇申込期限:11月26日(土)10:00amまで

全体会


     
特別講演

西谷 修 氏

教育の基本に立ちもどる~話す生き物の養育
[講師プロフィール]
哲学者。1950年生まれ。東京大学法学部卒業。東京都立大学大学院人文科学研究科修士課程修了。明治学院大学教授、東京都立大学大学院教授、立教大学大学院特任教授を歴任したのち、東京外国語大学名誉教授、神戸市外国語大学客員教授。フランス文学、哲学の研究をはじめ幅広い分野での研究、思索活動で知られる。
主な著書に『不死のワンダーランド』(青土社)、『戦争論』(講談社学術文庫)、『夜の鼓動にふれる―戦争論講義』(ちくま学芸文庫)、『世界史の臨界』(岩波書店)、『戦争とは何だろうか』(ちくまプリマー新書)、『私たちはどんな世界を生きているか』(講談社現代新書)などがある。

分科会

① 小学校 国語
「豊かに読むことを豊かに書くことにつなげるためには」
 昨年度は「子どもの文章表現をどう読み合うか」というテーマで、日常の出来事から感じ、考えたことを、主題意識、相手意識のある文章で表現する子どもを育てることをめざしました。また、子どもが綴った文章表現から、その子らしい表現を認め、生き方を励ますことを大切に研究してきました。
 子どもの「表現力」は、豊かで深い「読みの力」との相互作用で育ちます。文学教材からさまざまな表現方法、仕組と仕掛を学び、主題・思想をつかんでいくことは、より自由に文章で自分を表現することができる子どもを育てることにきっと繋がっていきます。そのため、今年度は「表現力」の基礎を耕す、文学教材の「読み」の授業を公開します。参加者の皆様には、公開研の授業事実から、昨年同様忌憚のないご意見をいただければ幸いです。
講師:上西 信夫(文芸教育研究協議会)
司会:本校教諭
提案授業:「くじらぐも」菅野将希(1年)/「モチモチの木」北村奈穂(3年)/「大造じいさんとガン」岡祐輔(5年)

② 小/中学校 社会
「沖縄」の視点を入れた近現代史の授業をどのように作るか
 数年前まで「東アジア」に力点を置いたカリキュラムを構想してきた。東アジア地域の歴史と現在が直面する課題について理解し、生徒たち自身がその解決を目指して思考することができるような学びのきっかけを作りたいと考えてのことだった。
 9年生は毎年、伊平屋島での民家泊を中心にした修学旅行で沖縄に行く。その民家泊を通して、子どもたちの沖縄に対する感度が変わること感じてきた。那覇市を中心に同心円を描いてみると沖縄は、東アジアの真ん中にあることがよくわかる地である。また、これまでたどってきた歴史を見ると、東アジアだけではなく東南アジア、アメリカそして「本土」の間で交流を重ねたり、時にはそれぞれの国の政策に翻弄されてきた場所である。生徒にとって身近になっているだろう「沖縄」という視点から近現代史を見ることは、よりこれまでとは違う見方、捉え方ができるのではないかと考える。限られた時間数の中、近現代史で何を取り上げていくことが、生徒の歴史認識をより豊かなものにしていけるのかを考えてみたい。
講師:三橋 広夫(淑徳大学非常勤講師)
司会:繁田 真爾(東北大学研究員)
提案授業:小畑 典子

③小/中学校 理科
「磁力線で考える電磁気」(単元:電磁気)
 学習指導要領にもとづく実践では電流が磁場から受ける力(ローレンツ力)の原理は、実験事実のみから単なる説明で終えてしまいがちである。今回提案する授業プランでは、「電流の作る磁場および磁石の作る磁場」、「磁場の重ね合わせによって生じる磁場の強弱」といった既習事項から、ローレンツ力の原因を生徒自らが考察できることをねらいとしている。
 また、磁力線に収縮性・反発性があると捉えることで、磁石どうしにはたらく力とローレンツ力を統一的に理解させられ、電気現象と磁気現象が密接なつながりをもった現象であるというように実感させられると考えている。
講師:田中 篤司(東京都立大学)
司会:栗田 克弘(山口大学)
授業者:上田 源也

④小/中学校 体育 保健
「体のつくりとしくみ」「生殖のしくみ」「免疫のしくみ」
    ~保健のカリキュラムの現状と課題~

 現在明星学園中学校では、8年生(中2)、9年生(中3)で、週1時間保健の授業を行っている。理科の授業から、「人の体に関わること」をもらってきたという感じで、2年間で「体のつくりとしくみ」「生殖のしくみ」「免疫のしくみ」という3つの単元に絞って学習している。
 週1時間で2年間という限られた授業数のなかで、浅く広くではなく、中学生にとって身近で興味関心が持てるような内容である「生殖」や「免疫」について、「しくみ」を中心に深く学習していく。また、そのことを学習するためにも、「人の体は細胞からできている」という人の体についての基本的な「体のつくりとしくみ」を最初に学習する。
 このカリキュラムについて、実際にどんな授業を展開しているのか現状を報告し、様々な視点でご意見をいただき、今後の授業に活かしていきたい。
講師:高橋 幸悦(元本校教諭)
司会:冨田 秀和(本校教諭)
報告者:森村卓(本校中学校教諭)

⑤中学校 数学
「ピタゴラスの定理〜シェーマの活用が革命を起こす⁉︎〜」

 ピタゴラスの定理は直角三角形の3辺a,b,c( a < c > b )の関係を方程式「a²+b²=c²」として認識し、活用されています。ある対象にピタゴラスの定理で挑む場合、当たり前のようにこの方程式に当てはめて未知数を求めることになります。このとき、「果たして生徒は対象を構造的に捉えられているのか」という疑念を抱くことはありませんか。こうした疑念を明らかできるのがシェーマの活用です。シェーマの活用によって、対象に対して問いを持ち、構造的に働きかけて対話することを通して、気がつくと何かを発見しているという課題学習が可能となります。最終的には、方程式の活用のみで構造的に見る目を獲得していたなんて体験が、公立中学校でも可能となるように一緒に考えられると幸いです。
講師:瀬山 士郎(群馬大学名誉教授)
司会:未定
提案授業:中西 正一

お申し込み方法

要項

PDFはこちらをご覧ください。

お問い合わせ先

公開研究会事務局:平山勲(中学校)
教務事務:小林枝里子
TEL:0422-43-2197