インターネットを中心とする技術革新によって、これまで私たちの生活を支えてきた「調べる・知る・分かる」という行動は、現在急速な変化をとげつつあります。何かを調べたいとき、パソコンやスマートフォンに検索ワードを入力しさえすれば、即座に情報を得られるようになっています。
しかし、膨大な情報にアクセスすることが容易になった一方で、私たちの「調べる」と「知る・分かる」の間からは、すっかり「過程」が失われてしまいました。つまり、「調べる」と「知る・分かる」の間にまったく距離や苦労がない状態が、現在の私たちの知のかたちとなってしまったのです。
情報に即座にアクセスできることはたしかに便利で、私たちの生活をそれだけ豊かにもしてくれます。しかしインスタントな知識によって、気がつけば私たちは、早急に結論だけを求めてしまったり、白か黒かというように、短絡的な思考に傾いてしまうことが多くなってはいないでしょうか。
こうした現代の知の大勢に対して、総合探究科では、研究の「過程」をしっかり描くということを、学習目標として掲げます。
たとえば、テーマ(題材)を決めるまでの曲折、「してみる」の計画や実際の活動、人との出会い、あるいは「してみた」が思うような成果が得られなかったことも含めて、これらはそのどれもが研究の貴重な「過程」なのです。総合探究科がめざすのは、即席の答えや、安易な解決策を導き出すことではありません。「分からなかった」という結論も、研究としては十分にあり得ることです。大切なのは、ここまで自分は調べて考えてみたが、分かったのはそこまでだったという、探究の過程そのものなのです。
この過程を「探究の軌跡」と呼び、日々それをつぶさに記録して積み重ねていく。そして卒業時に手元にまとめられた冊子『探究の軌跡』には、生徒一人ひとりにとってかけがえのない、それまでの歩みの克明な記録が記されることになります。即席の結果や結論にのみとらわれない、過程を大切にする内実豊かな学習こそ、総合探究科のめざすところです。
総合探究科リーフレット
『なぜ現在総合探究科か?―明星の教育に光を当てる』(明星学園をささえる会主催、第1回トーク&スタディ記録)(PDFファイル)
『「総合探究科」で自ら問う力を身に付ける…明星学園』YOMIURI ONLINE(外部リンク)
『中3の卒業研究 戸惑うほど自由なテーマ選び…明星学園』YOMIURI ONLINE(外部リンク)