明星学園

総合探究科

「総合探究科」とは?

明星学園中学校では、全教科で「探究」の活動を重視し、実践してきた歴史があります。その各教科での学びを、9年次には相互に横断・総合しながら、卒業研究のさらなる探究へと深めていく。明星学園で単に探究科ではなく「総合探究科」と呼ぶのは、そのためです。


「研究」とは? ~自分の外側の世界との対話~

私たちは普段、基本的には自己を中心とする世界を生きています。しかし研究とは、そうした自分中心の世界から一歩を踏み出して、自分の外側に広がる世界のあり方を問い、それに働きかけようとする営みです。
対象との格闘のなかでは、なかなか問題の核心に到達できなかったり、問題のあまりの難しさに立往生することもあるでしょう。しかしそうした困難さを伴う経験は、実は私たちの生活や生き方を反省的にふり返り、それをより豊かなものにするためには、どうしても不可欠な経験なのです。自分の外側に広がる世界との対話で直面する、困難や限界の経験。そしてそこから少しずつ見出されていく、新しい価値や生き方。それは、明星学園中学校が教育理念として掲げる「やわらかな鍛錬主義」ということとも、重なり合う活動なのです。

「問い」と「してみる」の二本柱

1)いかに「問い」を立てるか? ~「問い」が研究の鍵をにぎる~
結論よりも重要なのは、まずは自分にとっての切実な「問い」を発見・言語化し、それをどのように自分の「問い」として適切に立てていくことができるか、ということです。その意味で、探究の方向性を左右する重要な鍵は、「問い」が握っています。自分の問題意識にとって最もふさわしい「問い」を立てることができれば、研究の進め方や実際に「してみる」ことも、おのずと展望が開けてくるはずです。

2)中学生にとっての「研究」とは? ~「してみる」というオリジナリティ~
卒業研究は、専門家のような“立派な”学術論文を書くことが目的ではありません。自分の興味があること、切実な問題を掛け値なしに正面からとことん突き詰めていくことが、中学生には最も大切なことではないでしょうか。
「文献購読」や「考察」などのプロセスは、探究の上ではどれも等しく不可欠な作業です。しかし、中学生の研究にとってとりわけ重要なのは、「してみる」ことだと考えたいのです。実際に自分の足で集めた生のデータや資料は、どれも「そこにしか」、「そのときにしか」存在しない、同時代の貴重な記録なのです。その意味で「してみる」をくぐった研究は、どのような専門家の論文にも決して引けを取らない、オリジナリティのある研究といえます。
そして「問い」が自己内での対話を中心とするならば、「してみる」は、自分の外へと向けた実践です。この「問い」と「してみる」を二本柱に、つねに両者を往復しながら研究を深めていくことで、探究の豊かな世界へと分け入っていくことができるのです。



「探究の軌跡」を描こう!

インターネットを中心とする技術革新によって、これまで私たちの生活を支えてきた「調べる・知る・分かる」という行動は、現在急速な変化をとげつつあります。何かを調べたいとき、パソコンやスマートフォンに検索ワードを入力しさえすれば、即座に情報を得られるようになっています。
しかし、膨大な情報にアクセスすることが容易になった一方で、私たちの「調べる」と「知る・分かる」の間からは、すっかり「過程」が失われてしまいました。つまり、「調べる」と「知る・分かる」の間にまったく距離や苦労がない状態が、現在の私たちの知のかたちとなってしまったのです。
情報に即座にアクセスできることはたしかに便利で、私たちの生活をそれだけ豊かにもしてくれます。しかしインスタントな知識によって、気がつけば私たちは、早急に結論だけを求めてしまったり、白か黒かというように、短絡的な思考に傾いてしまうことが多くなってはいないでしょうか。
こうした現代の知の大勢に対して、総合探究科では、研究の「過程」をしっかり描くということを、学習目標として掲げます。
たとえば、テーマ(題材)を決めるまでの曲折、「してみる」の計画や実際の活動、人との出会い、あるいは「してみた」が思うような成果が得られなかったことも含めて、これらはそのどれもが研究の貴重な「過程」なのです。総合探究科がめざすのは、即席の答えや、安易な解決策を導き出すことではありません。「分からなかった」という結論も、研究としては十分にあり得ることです。大切なのは、ここまで自分は調べて考えてみたが、分かったのはそこまでだったという、探究の過程そのものなのです。
この過程を「探究の軌跡」と呼び、日々それをつぶさに記録して積み重ねていく。そして卒業時に手元にまとめられた冊子『探究の軌跡』には、生徒一人ひとりにとってかけがえのない、それまでの歩みの克明な記録が記されることになります。即席の結果や結論にのみとらわれない、過程を大切にする内実豊かな学習こそ、総合探究科のめざすところです。

総合探究科リーフレット

『なぜ現在総合探究科か?―明星の教育に光を当てる』(明星学園をささえる会主催、第1回トーク&スタディ記録)(PDFファイル)
『「総合探究科」で自ら問う力を身に付ける…明星学園』YOMIURI ONLINE(外部リンク)
『中3の卒業研究 戸惑うほど自由なテーマ選び…明星学園』YOMIURI ONLINE(外部リンク)

「総合探究科」3年間の流れ


7年(中1)
<図書館と情報>(週1)

図書館を使って調べる技術を学ぶと同時に、インターネットやコンピューターに支配されるのではなく、それを利用し、発信できる力を身につける。
<哲学対話>(週1)
一つの答えの出ない哲学的な問題について、対話を通して思考を深める。



8年(中2)
<探究実践>(週2)
身近なテーマについて共同で探究する経験を通し、具体的に「探究」の過程を学ぶ。
9年で取り組む『卒業研究』に向けての準備にあたる。



9年(中3)
<卒業研究>(週1)
自ら見つけたテーマを研究し、探究していく過程を『探究の軌跡』として、一冊にまとめる。生徒一人一人には担当教員がつき、中学校の教員全員でサポートしていくが、週1時間のこの授業は個々の研究のペースメーカーの役割を果たす。
1月の『卒業研究発表会』では、生徒全員がお客さんを前にプレゼンテーションを行う。