8年生この人に会いたい!「明星とわたし」~卒業生で進化生態学を研究している高橋佑磨さんが来てくださいました!
中学校ニュース
1月26日(土)に卒業生であり、現在千葉大学で研究を続けている高橋佑磨さんに来ていただき、中学2年(8年)生に向けて、「明星とわたし~何がどうなって、いまご自身が研究者になっているのか」というテーマで語っていただきました。
きっかけは、昨年の1月の朝日新聞に高橋さんたちが取り組んでいた研究の成果が取り上げた記事を平山先生が見つけたこと。高橋さんがショウジョウバエの研究をとおして、「集団の活力を高めるには、多様性こそが大切。少数派が活躍できる環境をつくれば全体のパフォーマンスも上がる。それは人間社会にもつながるのではないか」とコメントされているのを読んで、ぜひ今どんなことを考えているのか、どんな人生を歩んできたのかなど直接お話を伺いたいと思ったのです。
高橋さんの話は、幼いころから始まります。振り返ってみると、1人で遊ぶことが多かったとか。趣味は、折り紙とあやとり。仲間と仲良くなろうとするのが苦手だと感じていたそうです。それは明星に入ってからも同じで、休み時間になると、いちょうの木に登り過ごしていたそうです。いちばん上に登るたびに、登った日付と自分の名前を木に刻んでいたとか。(今、その木がなくなってしまっていて、本当に残念。)
4年生になって、クラブ活動が始まると昆虫クラブに入部。高橋さんが4年生になった時は、ちょうどJリーグが始まった年。学年の多くの子がサッカークラブに入ったのを見て、みんなと同じ道を選ぶのは何かいやだなと思って、誰も入らなかった昆虫クラブを選んだそうです。中学に入った時も、これまた人数が少なかった野球部にやむを得ず入ったそうですが、人とちがうことをやるということを楽しんで過ごしていたそうです。人とちがうことを楽しめるって、すごい!と思った8年生は少なくなかったはず。
中学生になってからも昆虫採集は続けていて、7年生の時にトンボの自由研究に取り組んでみたそうです。どこに何がどれだけいたのかということをまとめて、あるコンテストに応募。結果を楽しみに待っていたら結果は落選。どうして?何がダメだったのだろう?とモヤモヤ。そんな時、現在もちょうど8年生の数学を担当している平野先生の「校舎をはかる」というグループ研究に取り組みます。答えがわからないことに対して、どうやって答えを見つけていくのかということ、分度器を使ったり、ピタゴラスの定理を使ったりしながらあれこれ試したそうです。その経験を通して、自分のトンボの研究がどうしてダメだったのかに気づいたそうです。昆虫採集はあくまでも趣味であり、それは研究ではない。自分なりに仮説を立てて、調査、研究してみる視点が大切だと思ったそうです。まわりの人たちを「ぎゃふんと言わせたい!」とさらなるトンボの研究にのめりこんだそうです。9年、10年と2年にわたって研究したものを「日本学生科学賞」に応募、そこで見事に国内3位に。あれよあれよという間にそのまま日本代表として世界大会へ出場。見事に1位に輝いたそうです。この経験も研究者の道に進むきっかけになったとのことでした。
ここで、髙橋さんは「研究って何だろう」というお話をしてくださいました。高橋さんは特に中高時代は勉強はあまり楽しいとは思わなかったけれど、大学生、修士、博士課程に進むにつれて、勉強すること、研究することが面白くなっていったそうです。というのも、特に小・中・高で学ぶことはほんの基礎の基礎。勉強を重ねていく中で、専門性を高め、これまでの人類が到達してきた知識の壁に近づいていき、博士と呼ばれる人は、その壁の一部を突き破って、誰も知らなかった何かを発見することができる。それが醍醐味。何かを新たに発見することはうれしいし、世界がちがって見える。それはとてもすがすがしいこと。それが研究なのだと語ってくださいました。ただし、研究者は、専門性を追及していくと、どうしても視野が狭くなってしまうので、全体像を忘れないで人類の知識の壁を叩き続けることが大切なのだと話してくださったことも印象的でした。また、高橋さんはご自身の人生のキーワードとして「少数派」と「多様性」を挙げていました。少数派がたくさん集まると多様性が生まれる。だから、「少数派とか多様性に、ドキドキする」と。この言葉がとても心に残りました。
そんな高橋さんの研究テーマは、「人や生き物にある個性にはどんな意味があるのか」。トンボを例に説明してくださったのですが、あるトンボは、オスは1種類のみ。メスは、青色と茶色のトンボがいる。メスが2種類いる時、オスはどちらを好むのかを調査したそう。調査してみると、多い色のメスのほうにいくことがわかりました。それは進化の過程を考えてもわかる。人間の進化を見ても、もともと様々な個体差がある中で、置かれた環境などの中でだんだんいいものが残っていく。それが進化のセオリー。進化を考えると、多様性は共存できない。にも関わらず、生き物にはトンボひとつをとっても多様性が残っている。なぜ多様性が残っているのか、どうしたら多様性が共存できるのか、多数派と少数派のどちらが得をするのかを考えていく中で、髙橋さんは発見します。トンボのオスの求愛はとても激しいそうです。それを生物の世界でもハラスメントと言うのだそうですが、多数派のメスはたしかにモテる。しかし、メス的には、求愛され追いかけ続けられるよりもそこそこモテるほうがいい。なぜならオスに追いかけまわされていると、エサを食べる余裕がないから。その点、少数派はオスからの求愛は少ないけれど、その分しっかエサを食べることができて、子孫を多く産むことができる。そうすると、今度は、少数派とされていたメスのタイプが増えていく。つまり、少数派と多数派はいったりきたりしている。だから、多様性が共存できる!ということに気づいたそうです。トンボ以外でも見た目に多様性があるものとないものを比較してみたところ、多様性がある生物のほうが地球上の広範囲にわたって分布していることもわかってきたそうです。
このようなご自身の歩んできた人生、研究を通して、髙橋さんから8年生に「『違うこと』に自信を持って」というエールを送ってくれました。そもそも、覚えること(記憶する力)より答えがわかっていないことを考えること(考える力)のほうがとても大切。高橋さんの頭の中を探っていくと、自分の知識は明星で得たものはほんの一握り。でも、考える力は、小・中の9年間で鍛えられたと語ってくださいました。そして、何が将来につながるかわからないからこそ、目の前にあることを一つひとつ丁寧にやってみることを大切にしてほしいと語ってくださいました。
高橋さんのお話を聞いてから、8年生からの質問が途切れません。「研究費はどうやって、手に入れているのですか?」「外と中、どちらで研究している時間が長いですか?」「研究者になって良かったですか?」「今の研究以外に興味のあるテーマや分野はありますか?」「日本のあちこちで調査をする地域を決める時は、おいしいものがあるかどうかだと言っていましたが、これまでに調査した場所で食べていちばんおいしかったものは何ですか?」「研究していて、投げ出したいと思うことはないのですか?」「トンボやハエ以外にかわいいと思う生物はいますか?」「今後はどんな研究をしていきたいですか」
様々な質問の中で、髙橋さんが、研究の9割5分が失敗の連続。うまくいかないときは、放り出すこともしばしば。だからこそ、うまくいくとほっとするという話に8年生は研究の厳しさとおもしろさを感じたようです。また、実は、昆虫が好きだけど、得意ではないという一言にもびっくり。さらに、これからは、こういうコアな研究も続けていきたいけれど、人の役に立てるような研究も並行してやっていきたいと話している姿がとても素敵でした。8年生たちはまたひとり、かっこいい大人に出会うことができました!お話に来てくださり、本当にありがとうございました。
≪8年生から寄せられたこと≫
★研究は趣味ではなく、そこからもう一歩ふみこむものだと話を聞いて感じました。そして、髙橋さんの行っている多様性についての研究の内容はとても興味深く、人間にも言えることがいくつもあった。多様性があったグループのほうが増殖しやすいということや、時にマジョリティよりマイノリティのほうが得をするというところが意外でした。そして、中学~高校までおこなっていたトンボの研究の動機が「ぎゃふんと言わせる」ということで、そういうこともつながるんだなと思いました。
★最近の世の中は、「みんな同じ」というような女子のめんどくさい思考が増えて多様性があまり認められない社会になっている気がするけど、その中で「ちがう」ということの多様性を活かせる社会になればいいなと思った。
★「みんなと同じ」が安心すると思っていたけれど、高橋さんの「違うことに自信を持って」や「多様性が混ざっていることでおもしろい組み合わせができる」などの言葉をきいて、みんなと違くて良いんだなとも思えました。また、研究していて、急にわからなくなった時はほっぽり出すこともあると言っていたから、いろいろ試してみたり、挑戦してみてだめだったら失敗として人生の財産にすれば良いと感じられました。
★博士になりたい人ですごい研究をしている人でも、最初から勉強がおもしろかったわけではなかった。大学に向かっていくにつれて勉強がおもしろくなっていくらしい。博士・研究者になるには、数年以上研究し続けて、誰も知らない世界を垣間見ることができるというその瞬間が本当に好きな人たちなんだなと思いました。
★人類が知らないこと(知識の壁)の外に行くには「これを知りたい」という強い気持ちがいるのだと思った。人との違いを悔やむのではなく、自信を持つことが重要。考えること、考える力がとても大事なのだと改めて思った。
★自分や世の中は少数派を批判しがちだけど、少数派があることで自分たちが気づけたり、刺激されたりするということを深く知れたからよかった。次からは少数派のことは全否定せずに、寄り添って考えていきたいと思った。
★多様性という言葉を初めて知りました。私たちはよく多数決で決めるから、多数=有利だと思っていたけれど、生物的にはそんなことなくて、むしろ個性的なものが最後には未来の多数になる、だから個性的なことは未来にとって、とても重要なことなんだなと思いました。
(8年学年主任 小畑典子)
きっかけは、昨年の1月の朝日新聞に高橋さんたちが取り組んでいた研究の成果が取り上げた記事を平山先生が見つけたこと。高橋さんがショウジョウバエの研究をとおして、「集団の活力を高めるには、多様性こそが大切。少数派が活躍できる環境をつくれば全体のパフォーマンスも上がる。それは人間社会にもつながるのではないか」とコメントされているのを読んで、ぜひ今どんなことを考えているのか、どんな人生を歩んできたのかなど直接お話を伺いたいと思ったのです。
4年生になって、クラブ活動が始まると昆虫クラブに入部。高橋さんが4年生になった時は、ちょうどJリーグが始まった年。学年の多くの子がサッカークラブに入ったのを見て、みんなと同じ道を選ぶのは何かいやだなと思って、誰も入らなかった昆虫クラブを選んだそうです。中学に入った時も、これまた人数が少なかった野球部にやむを得ず入ったそうですが、人とちがうことをやるということを楽しんで過ごしていたそうです。人とちがうことを楽しめるって、すごい!と思った8年生は少なくなかったはず。
中学生になってからも昆虫採集は続けていて、7年生の時にトンボの自由研究に取り組んでみたそうです。どこに何がどれだけいたのかということをまとめて、あるコンテストに応募。結果を楽しみに待っていたら結果は落選。どうして?何がダメだったのだろう?とモヤモヤ。そんな時、現在もちょうど8年生の数学を担当している平野先生の「校舎をはかる」というグループ研究に取り組みます。答えがわからないことに対して、どうやって答えを見つけていくのかということ、分度器を使ったり、ピタゴラスの定理を使ったりしながらあれこれ試したそうです。その経験を通して、自分のトンボの研究がどうしてダメだったのかに気づいたそうです。昆虫採集はあくまでも趣味であり、それは研究ではない。自分なりに仮説を立てて、調査、研究してみる視点が大切だと思ったそうです。まわりの人たちを「ぎゃふんと言わせたい!」とさらなるトンボの研究にのめりこんだそうです。9年、10年と2年にわたって研究したものを「日本学生科学賞」に応募、そこで見事に国内3位に。あれよあれよという間にそのまま日本代表として世界大会へ出場。見事に1位に輝いたそうです。この経験も研究者の道に進むきっかけになったとのことでした。
様々な質問の中で、髙橋さんが、研究の9割5分が失敗の連続。うまくいかないときは、放り出すこともしばしば。だからこそ、うまくいくとほっとするという話に8年生は研究の厳しさとおもしろさを感じたようです。また、実は、昆虫が好きだけど、得意ではないという一言にもびっくり。さらに、これからは、こういうコアな研究も続けていきたいけれど、人の役に立てるような研究も並行してやっていきたいと話している姿がとても素敵でした。8年生たちはまたひとり、かっこいい大人に出会うことができました!お話に来てくださり、本当にありがとうございました。
★研究は趣味ではなく、そこからもう一歩ふみこむものだと話を聞いて感じました。そして、髙橋さんの行っている多様性についての研究の内容はとても興味深く、人間にも言えることがいくつもあった。多様性があったグループのほうが増殖しやすいということや、時にマジョリティよりマイノリティのほうが得をするというところが意外でした。そして、中学~高校までおこなっていたトンボの研究の動機が「ぎゃふんと言わせる」ということで、そういうこともつながるんだなと思いました。
★最近の世の中は、「みんな同じ」というような女子のめんどくさい思考が増えて多様性があまり認められない社会になっている気がするけど、その中で「ちがう」ということの多様性を活かせる社会になればいいなと思った。
★「みんなと同じ」が安心すると思っていたけれど、高橋さんの「違うことに自信を持って」や「多様性が混ざっていることでおもしろい組み合わせができる」などの言葉をきいて、みんなと違くて良いんだなとも思えました。また、研究していて、急にわからなくなった時はほっぽり出すこともあると言っていたから、いろいろ試してみたり、挑戦してみてだめだったら失敗として人生の財産にすれば良いと感じられました。
★博士になりたい人ですごい研究をしている人でも、最初から勉強がおもしろかったわけではなかった。大学に向かっていくにつれて勉強がおもしろくなっていくらしい。博士・研究者になるには、数年以上研究し続けて、誰も知らない世界を垣間見ることができるというその瞬間が本当に好きな人たちなんだなと思いました。
★人類が知らないこと(知識の壁)の外に行くには「これを知りたい」という強い気持ちがいるのだと思った。人との違いを悔やむのではなく、自信を持つことが重要。考えること、考える力がとても大事なのだと改めて思った。
★自分や世の中は少数派を批判しがちだけど、少数派があることで自分たちが気づけたり、刺激されたりするということを深く知れたからよかった。次からは少数派のことは全否定せずに、寄り添って考えていきたいと思った。
★多様性という言葉を初めて知りました。私たちはよく多数決で決めるから、多数=有利だと思っていたけれど、生物的にはそんなことなくて、むしろ個性的なものが最後には未来の多数になる、だから個性的なことは未来にとって、とても重要なことなんだなと思いました。
(8年学年主任 小畑典子)