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8年生「この人に会いたい!」キリン博士の郡司芽久さんをお招きしました。

中学校ニュース
11月6日(土)に、現8年生の「この人に会いたい」企画の第一弾として、キリン博士で東洋大学生命科学部で解剖学を研究されている郡司芽久さんをお招きしました。
春休みに『キリン解剖記』を読み、「世界で一番キリンを解剖しているかもしれない」という郡司さんに直接お会いしてお話を聞いてみたいと温め続けていた思いがようやく叶いました!
苦手な人は無理に見る必要はないと声をかけてもらって最初に見せてもらったのがチーターを解剖する動画。あまりの手際の良さに目が釘付けになりました。

郡司さんの専門は、解剖学、機能形態学。キリンだけではなく、様々な動物の身体の形にはどんな意味があるのだろうかなどの「身体の機能」を研究しているそうです。たとえば、ヒトの身体の特徴のひとつの母子対向性。親指の曲がる向きが他の4本の指と違うおかげで、ものを持ったり掴んだりと器用に動かせるようになっており、木の上で生活する生き物によくある特徴であるというお話に、言われてみればと何人もの8年生が自分の手を握って確かめていました。普段は、当たり前に思っていることも、立ち止まってみると、どうしてそういう構造・仕組みになっているのか、理由があるということに気づかされました。

また郡司さんの研究によって発見された、キリンの8番目の「首の骨」の話をしてくださいました。
人やクジラなどの哺乳類のけい骨の数は7つが基本だそうです。ですが、解剖していく過程で、基本的に、胸骨は肋骨がじゃまをしてほぼ動かないそうですが、キリンの第一胸骨は、15度くらい動くことがわかったそうです。「これは、第8の首の骨と言えるのでは?」と郡司さんは考えたとのこと。長い首のおかげで高いところの葉を食べることが得意だけど、水を飲むのは難しくなってしまう。でも8番目の「首の骨」のおかげで、地面の水を飲むことも可能になっている。こんな風に、解剖を通して、キリンの生活にとって大きな影響を及ぼしていることがわかったそうです。解剖や解体をすることで、その生物の体のつくりやその生き物にしかない特有のものなどがわかるという話に、興味津々でした。しかも、その解剖から着想した「ものづくり」ができる、他の分野の専門家ともつながって、新しい研究につながる(現在、ロボットの共同研究をされているそう)というお話にも驚きでした。
郡司さんのお話の中で、私がいちばん印象に残ったことは、「知識は、誰かと仲良くなる時に必要」「学ぶことは、他の人と仲良くなるきっかけになる」ということです。キリンや解剖の研究をしていると、「何の役に立つの?」とよく聞かれるそうです。そういう時に、郡司さんがいつも思うのは、この言葉に振り回されない人になってほしいということだそうです。未来になると、ふりかえって役に立っているなと思うことがたくさん待っている。だから、目の前にある「知識」をどういうふうに役に立てられるのかと考えてみる。いろんな正解を知って、それをどうつなぎ合わせて役に立たせていけるかを考えらえるようになる人になってほしいと、8年生に温かいエールを送ってくれました。

最後に、質疑応答の時間になると、次から次へと手があがります。
「郡司さんの好きな食べものは何ですか?」「キリンを食べたことはありますか?」「解剖している時に心が痛まないんですか?」「解剖してきた中でいちばん楽しかったのは?」「今までいちばん時間がかかったのは?」「今までいちばんめずらしい動物の解剖は?」「スケッチは何のためにするのですか?」「解剖学をしていてやりがいを感じることは?」「これからどんな研究をしていきたいですか?」「中学生時代、人間関係で悩んだことはありましたか?」

ひとつひとつの質問に丁寧に答えてくれます。郡司さんが決めていることは、研究のために動物を殺すことはしないということ。寿命や事故などで死んでしまい、何もしなければそのまま地球に還っていくだけで終わるより、何かすれば、その動物がどう生きてきたのか、生きていく上でどんな工夫がなされてきたのかがわかるから解剖をする。また、解剖すると、その動物が好きになる。身体の構造を知ると、「へぇ!」という驚きがあり、好感度があがるという話に、多くの8年生が真剣に耳を傾けていました。そして、実は、解剖をすることにやりがいを感じることはあまりないけど、自分が何に生かされているのかというのを深く知れるようになったことがよかったと思っているという話にびっくり。

そして、いちばんのびっくりは、「キリンビールは好きですか?」という質問に返ってきた答え。実は、よく聞かれる定番の質問だそうです。さすが郡司さん!で、キリンビールのこともいろいろ調べていったところ、実は、坂本龍馬が日本にキリンがやってくるのに一役買っていること、キリンビールができた同じ年(1907年)に、初めて日本に生きたキリンがやってきたことがわかったことなどを話してくれてました。こうして、ひとつひとつの「知識」がつながっていく意外性と面白さを教えていただきました。

あっという間の90分。みんなで聞くと、誰かの質問から新たな疑問や聞いてみたいことが出てきて、とても楽しい時間となりました。最後までまだまだ聞いてみたいことがある8年生が列をなしていました。
郡司さん、どうもありがとうございました。
<8年生の感想より>
★動物の命を良いように使っていて、元気のない動物を元気にするように研究をしたりするのは本当にすごいと思った。それで命が救えるならすごい仕事だなと話を聞いて思った。その時は無駄かもしれないけど、知識はだれかと仲良くなるたえに必要というところで、ちゃんと授業を聞かないといけないと思った。

★キリンなどの動物の解剖の動画を見て、自分も人生において1回は動物を解剖してみたいと思った。

★気になったことを調べて研究することは楽しい!ということが分かって、自分も気になったことを調べてみようと思いました。人間の手術道具と変わらないと聞いた時、「まじか!?体力いるじゃん!」と思いました。キリンの解剖とかいろんな動物の体のつくりが気になりました!

★死んでしまった動物は、いろんなことをされて解剖されていたんだと思った。図鑑とか博物館にあるものは、こういう感じでぼくらの目に届いているんだなと思いました。研究のために殺すことはできないというのは、やっぱり解剖とかは自然に死んでしまったものを解剖するから、研究や記録を残すのは大変なんだなと思いました。

★応用とかがおもしろかった(ロボットのやつ)。自分でも歩く時とかわざわざ足をこう動かしてとか考えないもんな。それだけ構造がよくできてたりしてるんやろな。(まあ慣れとかもあるけど。)知識は、持っているだけで価値があるもんね。いつか使えるって思っておかないと全部つまんなくなりそう。おもしろいと自分に錯覚(?)させる方法も大事だよね。

★役に立つか経たないかは未来にならないと分からないということが印象に残りました。解剖の動画を見るのが面白かったし、他の動物の役にも立つときいて、解剖はすごく大切なことなのだと思いました。解剖のしかたをもっとくわしく知りたかったです。

★生きものはとても複雑な体をしていて、色々な進化を経ていること。その進化には必ず理由があり、それを知ると、より生物について知れること。進化によって生き物は多様性が生まれていることを実感できた。哺乳類のけい骨がなぜ7つなのか、キリンが水を飲むときの姿勢になんか深い理由はあるのかなどの質問をしたとき、けい骨が7個な理由はまだわかっていないらしく、とても興味深い。あまりぼくは解剖学をやりたいと思っていないし、生物自体も特別好きだったりするわけではないけれど、色々な体験談は参考になった。

★1つのことを好きでずっと研究し続けられるのはとても素敵なことだと思ったし、すごいと思った。また、私もそのように好きなことを好きでい続けて研究できるといいな。

★キリンの解剖をしている様子をもっと見たかった。生き物を殺すことで新しい知識を得ることを自分もあまり良く思えない。勉強をしていて、自分もやる意味が分からない勉強があり、郡司さんの話を聞けて、少し勉強に対しての考え方が変わった。解剖をすることで、関心のなかった動物のことを好きになったり、興味がわくようになるということを聞いて、とても驚いた。解剖学に出会う前は、まったく違うことに興味を持っていたと聞いて、自分も新しいことに興味を持ってみようと思った。

★何故キリンの身体はああいう構造になったのか?理科が好きだからやってみたいと思った。自分が研究したことが世間の役に立つのかなって思ったら、面白いなと思う。小学校の頃からやっていたことが役に立つことがあったし、自分がやってみたいと思うことも、やりたくないことも、少しでもやっておこうと思った。自分の知りたいことを研究して、それで発見があったら自分にとっても得だし、世間にとっても良いことかもしれないから、これから自分の知りたいと思うことをたくさん考えたり、できる限りそれについて研究?したいと思う。化石も研究したいと言っていたし、生物の歴史を知っている必要もあるのかなと思うと、すごいなと思う。

★解剖ってすごく数字を使ったり知識がいる難しいものなのかと思っていたけど、難しいだけでなく、楽しみながらできるんだなとイメージが変わったり面白そうだなと思いました。どこの部位がどう動くかで、~のしやすさが変わったりするということも面白かったし、実際に解剖してみることでなぜこういう動きができるのかを知れるというのは楽しそうだなと思った。私は愛着がわいてしまったら死んでしまったことが悲しくなって、できるのかな?って思ってたけど、解剖することで動物のことを知りながら解剖した結果とかを残してあげられるから、そのまま地球に返すよりは良いし、考え方が変わった。私は夢がないけど、急にやりたい仕事とか研究したいことができるかもしれないから、楽に考えようという気持ちになった。

★個人的に解剖している場面はグロかったので、あまり見れはしませんでしたが、解剖学=動物の身体のつくりを知るとかの浅い考えだったのですが、解剖学=なぜその機能があるのかを解明するというのを聞いて、かなり興味が惹かれました。

★動物を解剖することによって、病気やケガをした時、どこに注射を打てばいいか、どうすればいいかなど分かると聞いた時に、そういうのが分かるって、すごいことだなと思いました。あと、結構後に、人間の手や足のつくりは、生きもの全体からするとすごいユニークってことを知って、驚きでした。

★あんなことをできるのがすごいと思った……!解体するのは初めてやる人でも、簡単にできるのかどうか聞きたい!小動物はやらないのですか?なぜ?母指対向性に関しての話が興味深かった。解剖して調べただけで、ロボットとかを作れちゃうのがすごい!!!いろいろなことを初めて知れて面白かった。

★胸椎すごいと思いました。死んだ動物を使って生きている動物の命を助けたりする知識を得ているんだなと。

(8年学年主任 小畑典子)