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〖ほりしぇん副校長の教育談義〗(23)「学校をもっと開かれた場所に」③「してみる計画~卒業研究のためのフィールドワーク」

中学校ニュース
*日々感じる中学生の姿、中学校での学びについて考える連載〖ほりしぇん副校長の教育談義〗(毎週土曜日配信)第23話は、「『学校をもっと開かれた場所に』③-「してみる計画~卒業研究のためのフィールドワーク」です。

学びを教室の中だけに限定せず、外へと目を向けたとき、そこには多様な学びの機会があることに気づきます。しかし、待っているだけではそのようなチャンスには出会えません。どのような仕掛けを作るか、どのような協力体制を作っていくかが学校に求められます。

(中学校副校長 堀内)


本校では1996年度より中学3年生に1年間をかけた『卒業研究』を実施しています。テーマ選びこそがこの取りくみの要です。それが自分の本当に関心のあること、自分が心から好きなことであってほしいと願っています。そのためには自分自身と向き合うことが求められます。与えられるのを待っているだけでそれはみつかりません。「自立・自律」への第一歩です。ただの「良い子」ではいられません。
でも、それはとても勇気のいることです。正解がはっきり見える世界ではないからです。研究に失敗はつきものです。失敗を恐れては何もできません。まずは行動してみる。自ら働きかけ、社会とかかわってみる。そしてそれがどんなに楽しいことなのかを感じてもらいたい。そんな願いを込めて我々教員は、卒研保護者ボランティアの皆さんとともに彼らをサポートしています。

彼らには具体的な研究活動としてフィールドワークを求めます。私たちはその計画を「してみる計画(卒業研究に向けてのフィールドワーク)」と名づけました。関連施設を訪問したり、専門家や識者の方へ取材させていただくこともあります。生徒自身が集めた情報を研究のもとにすることで、中学生ならではのオリジナリティのある研究になっていきます。そんな「してみる計画」のいくつかを紹介します。(2019年度卒業生より)



◇テーマ:井の頭公園のモグラ塚の分布

*通学路の井の頭公園で、モグラが穴を掘ったであろう跡をいくつも発見、モグラを身近なものと気づいた瞬間、水が湧くようにモグラのことを知りたくなった。

<してみる計画>
・井の頭公園のモグラ塚を観察、目立った生息域を記録、「井の頭公園のモグラの分布図」を作成
・多摩動物公園「モグラの家」を訪れる


◇テーマ:オカダンゴムシの交替性転向反応の決定に関する感覚器官の影響

*幼いころから虫が大好きで、見つけた虫をずーっと見ていたり、暇があれば探しに行ったりしていた。そんな中、ダンゴムシを迷路に入れるとジグザグに進むということを知り、その不思議さがテーマにするきっかけとなった。

<してみる計画>
・自分の家の庭の落ち葉の下にいたオカダンゴムシを10匹捕獲。工作用紙を使い、コーナーが4回、角度が90度、幅、高さはそれぞれ1センチメートル、直線の長さは5センチメートルの通路を制作、スタート位置から歩かせる実験をした。一匹当たり10回、合計100回の試行を行い、対照実験とした。
・対照実験からいくつかの仮説を立て、さらに実験でそれを検証していった。


◇テーマ:神戸毅裕による神戸毅裕のためのオリジナル走法

*陸上競技、特にスプリント競技において体格の差が記録に及ぼす影響は大きい。欧米人と同じ一軸走法で日本人が世界で活躍することは難しいといわれ、高野が欧米人との対格差を埋めるために発案した二軸走法を末續が使用、2003年世界陸上200mで銅メダルを獲得した。私は末續と同じ動きをすれば速く走れると考え、末續の走りを模倣したがタイムは短縮しない。そんな時、山縣の「個々人では筋肉のつき方や骨の成長速度などが異なるため、自分のオリジナルを見つけなければいけない」という言葉に出会う。自分のオリジナル走法について仮説を立ててみた。

<してみる計画>
・二軸走法のメリットとデメリットを分析、自分に合った練習方法を考え、7月30日~11月20日の期間、毎日データを記録し、分析。「ジュニアオリンピック予選会」「支部対抗陸上」等の大会の記録の伸びを見る。
・筑波大学の高野進さん(元オリンピック選手)に相談し、アドバイスをもらう。


◇テーマ:公園と子ども―子供が自由に遊べるようにするためには―

*小学校4年生の時、放課後に友達と楽しく遊んでいた大好きな公園。しかし、ある日、学校の先生がやってきて「公園の近くに住んでいる人から、子どもたちが騒いでいてうるさいという通報があった」と注意された。その時、公園で静かに遊べなんておかしいという怒りが今でも残っていて、それがこのテーマにした理由である。

<してみる計画>
・国分寺市の町中にある小さな公園のルールが書いてある立札の写真を撮りまくり、理不尽だと思うルールを見つけ、なぜこのようなルールを作っているのか仮説を立てる。
・市役所の緑と建築課に行き、疑問を聞いてみる。また、母校の小学校の先生の所に行き、インタビューする。
・教育評論家の尾木直樹先生とお話しできる機会を作っていただき、質問してみた。子どもを地域みんなで支えあい育てていく「地域の子供」と考えていないという視点、もう一つは子育て時代に育児にほとんど関わっていない中年男性は子供の声が生理的にカンに触るといった、今まで考えていなかったような視点に出会う。
・さらに、明星大学デザイン学部教授の萩原先生にお会いし、同世代のつながりをつくるイベントの試みやその苦労など、新たな観点をいただいた。


◇テーマ:なぜ日本人から着物離れが進んでいるのか

*中学2年生の秋に出会った『源氏物語』。そこで興味を持ったのが詳しく描写されている装束の説明。そこでふと思った。平安時代、多くの人にとって当たり前の物だった装束や着物が、なぜ現代を生きる私からは遠い存在になってしまっているのか、そんな疑問が私の頭に浮かんだ。

<してみる計画>
・仮説を立て、検証するために夏休みの2週間、浴衣を着て生活し、様々な文献にあたりながら考察を深めた。
・「江戸東京たてもの園」を見学、仮説を検証するために、日本の家が和風から和洋折衷の家に変わっていく過程を調べた。その際、ガイドさんの説明も参考になった。
・大妻女子大家政学部の中川先生(本校卒業生)に論文完成まで相談にのっていただく。


☆ 参考:『中3の卒業研究~戸惑うほど自由なテーマ選び』(読売「中学受験サポート」取材記事)

☆ 参考:『「出会い」を通して個性を開花させる卒業研究』(読売「中学受験サポート」取材記事)

★ 次回からは、中学校の国語の授業についてお話ししたいと思います。