明星学園

トピックス(中学校)

お知らせ

9年特別授業『見えない山を登りつづける』~K2登頂からシリア難民取材へ(小松由佳さん)

中学校ニュース
11/30(水)、特別授業「この人に会いたい」の企画として、ドキュメンタリーフォトグラファーの小松由佳さんをお招きしました。
小松さんは、チョモランマに次ぐ世界第二の高峰、K2(チョモランマ(エベレスト)に次いで世界で2番目に高い山で、チョモランマより難関で危険な山と言われています)に日本人女性として初めて登頂に成功、登山家を引退した後は、フォトグラファーとしてシリアの難民を取材、配信しています。


小松さんの面白いところは、そのまま登山家の道を進まなかったところ。K2登山のために雇った現地のポーターさんたちと出会い、「人間の豊かさって何だろう」と考えるようになったそうです。
小松さんは、毎年シリアに通うようになり、そこで知り合った、沙漠でラクダを放牧しながら生活しているあるご家族と交流を重ねられていきます。ところが、2011 年におきた北アフリカや中東の国々を中心とした民主化運動の波がシリアにも押し寄せ、シリアも内戦状態に陥ってしまいます。小松さんが親しくしていたご家族もその影響を受けることに。小松さんは、フォトグラファーとしてシリアやシリア難民の取材を始めます。現在は、そのご家族の息子さんの一人で、難民としてシリアを逃れた方とご結婚され、一緒に日本で生活されながらフォトグラファーとして活動されています。生活習慣や価値観の異なるパートナーとの生活は、思いもよらないことがたくさんあるそうです。また、9 月にトルコ、シリアへお子さんと一緒に取材に出かけられたばかりの小松さんからシリア難民の現状もお話していただきました。
シリアでは、現在、死者約50万人、難民(国外)約670万人、避難民(国内)約800万人と、東京都の人口ぐらいの人が「生活」を失ってしまっているそうです。小松さんのパートナーのご家族もトルコに逃れ、さらにヨーロッパの国へ避難しようとされているとか。また、今回の取材では、パートナーとご家族が暮らしていたシリアのパルミラも訪れたそうですが、住んでいた家は様々なものがなくなり、衣服などが散乱していたそうです。10万人いた住民が500人にまで減ってるとのこと。それでも取材を続けるのは、「どういった物語の中で生きているのか」を知りたい、伝えたいという想いからという話が心に残ります。

K2 でのトイレ事情、イスラム文化圏で生活されてきたパートナーの方と日本で生活する中で直面した様々な「事件」のエピソードなど、どれも小松さんからしか聞けないことばかり。最後に、「見えない山」を目指して挑戦し続けることの大切さを9年生へのメッセージとしてお話していただきました。ひとりひとり心に刺さるメッセージがたくさんあったのではないでしょうか。小松さんが撮られた人の温かさを感じられるような写真にも魅了されながらの時間となりました。

小松さん、お話に来てくださり、ありがとうございました。

<9年生の感想より>
★日本だけで生活しているから、日本の視点で物事を見たりしてしまうけど、他の価値観をもつ国や文化を知ることで物事のとらえ方、見え方が変わってくるんだなと学びました。日本は先進国だから便利なことや知らない所で生活に役立つものが作られているけど、他の国からしたら感謝するべきところがたくさんありそうと思ったから、感謝は忘れないようにしたいです。将来の夢とかを叶えるために、下積みやコツコツ頑張る事を心がけようと思いました。

★人ってほんとに何でも出来る。することが出来ると感じた。今まで自分のやりたいことを限定して探していたが、選択肢がけっこう増えた気がする。こんなにやりたいことが出来るのは本当に凄いと思った。日本生まれで本当に良かったと思う。人は一歩踏み出しさえすれば、ほとんどできるものであると感じた。やりたいことがあったら、積極的にやっていきたい。

★山に登るのは大変だし、疲れるだけだと思っていたけど、話を聞いていくうちに、自分が思っていたよりも人々に支えられて、自分の強い気持ちがないと、登り切り下山するのも難しいことを知った。難民は年々増えているけれど、小松さんの夫のように、他国で暮らしてくると、文化の違いや働き方に違和感を覚えることが分かった。シリアでは「毎日友人と会うのが当たり前」「毎日連絡をとっていないと友達ではない」という友人の価値観があって、価値観が異なる人との生活はお互いが理解し合わないといけない、日本人視点、シリア人視点で見るのではなく、二方から見た視点、どうしたら心地よく生活を二人で出来るかを考えなければならないということが分かった。

★僕もスポーツをしているから過程が大事というのはものすごくわかった。そして世界の80人に一人が難民というのがとても多いなと思った。それに価値観の違いで豚肉をイスラム教の人に食べさせることでテロリズムになってしまうということ。テロリズムは暴力とかのものだと思っていたから意外だった。チャンスは一度しかないからそのチャンスをつかめる準備をしておくという言葉に、とても共感した。自分もそうやってチャンスをつかめるように準備しておきたい。

★それなりに楽しんではいるけれど、毎日の生活に追われて、好きなこともじっくり味わってはいないのかもしれないと気づかされました。内戦で傷ついたシリア人が、ゆとりを持って豊かな人生を送れる日がくるといいなと思いました。

★自分で作るチャンスと人からもらうチャンスがある。チャンスはいつ降ってくるかわからないからチャンスをつかむ準備をしておく、チャンスは時に一度きりというのはすごい考え方だと思った。目の前の小さなことからやって、大きなことに挑戦するということは、大切なことだと思った。~だからできないではなくて、~だからできるということを話していて、コロナだからできないじゃなくてコロナだからできることは何だろうと思った。

(9年社会科担当 小畑)