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【この人に会いたい!】~スーザン・サザードさん「ナガサキを語り継ぐ~5人の被爆者との出逢いから~」

中学校ニュース
10月26日(木)、12年という年月をかけて『ナガサキ』 という本をまとめられたスーザン・サザードさんと、この本に出会い日本でも読んでもらいたいと熱意をもって翻訳した宇治川さん、そして、長崎からスーザンさんの本の朗読のために、被爆体験を語り継ぐ永遠の会の甲斐さんと前川さんが明星学園に来てくださいました。7年生(中1)、8年生(中2)、9年生(中3)が体育館に集まって、お話を伺いました。

スーザンさんは、普段は、アメリカでノンフィクション作家をされながら、大学でノンフィクション学を教えていらっしゃいます。アメリカでは、今でも「原爆投下のおかげで戦争が早く終わり、多くの命が助かった。原爆投下は正しかったのだ」というような評価がされることが多いそうです。
そんなアメリカで生活してきたスーザンさんですが、16歳の時に1年間日本に留学していた時に、修学旅行で訪れたのが長崎。長崎のことがずっと心に残っていたスーザンさんのターニングポイントになったのは、その十数年後、被爆体験を語りにアメリカに来ていた長崎で被爆していた谷口さんの通訳を突然、頼まれたこと。その谷口さんとの出会いをきっかけに、長崎で起きたことをもっと知りたい、アメリカで見落とされているのことがあるのでは?と強く感じ、長崎のことを知る旅が始まります。スーザンさんは、長崎の被爆者がどんな思いで生きているのか、何度も長崎へ足を運んで話を聞き、それと同時に様々な専門家の方へのヒアリング、長崎の原爆投下資料を丹念に読み込み、1冊の本を書きあげたそうです。
今回は、スーザンさんが出会った5人の被爆者から語ってもらったことを、永遠の会のお二人の朗読を通して、私たちに伝えてくれました。スーザンさんは、被爆者の方との出会いを通して、私たちにとっては遠い昔に起きた抽象的なことかもしれないけれども、当事者にとっては抽象的なことではない。キノコ雲の下に生きていた人たちがいた、そして、そこから生き抜いてきた人たちがいることを記憶し続ける大切さを語ってくれました。また、スーザンさんから「長崎が歴史上最後の被爆地であり続けることに全力を尽くす」「ひとりだけの力では何もできないけれど、そのひとりがたくさん集まれば考えられないことができる」という被爆者の方々の強い願いのバトンを渡されました。
最後にスーザンさんから、「今、私たちはもっと大きな夢を語らなくてはいけないことがある。私たちが被爆者の人たちのストーリーを語り継ぎ、平和な世界をつくっていく使命がある。その『平和』は何なのかを一緒に考えていきたい」というメッセージを贈ってくださいました。

スーザンさんのお話を伺い、「被爆者」という人は誰ひとりとしておらず、谷口さん、長野さんという名前がある1人の人であるということ。そして、私たちと変わらず夢があったり、嬉しいことがあったり、悲しいことがあったりしながら毎日を送っていた1人の人であることを思い出させてもらいました。
長時間にわたる講演でしたが、質問の時間になると、次々に手が挙がります。「平和を実現させたいと言っていましたが、(スーザンさんは)平和を実現させるために、今、何をしていますか?」「(1980年代のヘビメタルやハードロックが好きな生徒から)その曲の歌詞の中には、「核戦争」や「大量死」などという言葉がたくさん出てきますが、戦争に関係している人はそのことについて、どう思っているのかに興味があります。」「今でもイスラエルとガザでの戦争のように戦争が起こっていたり、核兵器を保有していたりする国がたくさんありますが、そういうものをなくすには、一体どのような努力が必要だと思いますか?」「アメリカの人たちは、9.11の後に、広島や長崎の人を理解したと思いますか?」「スーザンさん自身は平和って何だと思いますか?」「世界の核兵器の数がスライドに出ていましたが、核兵器を持っている国は、どうして簡単に核兵器を手放すことができないんですか?」「少し前にSNS映画『バービー』と『オッペンハイマー』を混合するファンアートが流行っていると聞いて調べてみたら、バービーの後ろで原爆を象徴するキノコ雲がピンク色に塗り替えられてバービーの後ろで爆発するといった、ファンアートやグッズがたくさん売られているというのを知りました。アメリカでは、原爆への認識はその程度なのですか?原爆に対する認識は薄いのでしょうか?」この本を翻訳して日本に紹介してくれた宇治川さんへも「宇治川さんは、どうしてこの本を翻訳しようと思ったのですか?」という質問が寄せられ、それぞれの質問に、スーザンさんも宇治川さんも真剣に真摯に答えてくださり、あっという間に終わりの時間となりました。
スーザンさん、宇治川さん、甲斐さん、前川さん、とても大切なことを私たちに伝えてくださり、ありがとうございました。

≪生徒からの感想を紹介します。≫
★アメリカでは「原爆を落としたのは正しかった」と考えている人がたくさんいるというのが衝撃的だった。同じ場所の、原爆が投下される前とその後の写真がすごかった。街がまっさらになっていた。こんなに被害を受けた人がいるのに世界にたくさんの核兵器があるのが不思議だった。(7年生)

★自分はマンガが好きです。そしてマンガといえば、自分の命をかけて、ひとを守る、そんなのが多いです。でもそれは戦争とやっていること同じじゃね?って思いました。正直に言うと、今日見せてもらった写真の中にあった大けがの写真、「うわっ」って思いますよね。こわいし、こんなのを身近で、さらにはあの姿の親族を見ていたのだと思うと、なんとも言えません。でも、マンガだと写真よりもコミカルに絵を描いているので分かりずらいけど、そのようなメッチャグロい姿を見て、「カッコイイ、このマンガ面白い」と思っている自分がいます。それは絶対によくなじゃないですか。マンガを描くときは、被爆者の方にも誇れるようなマンガを描きたいです。(7年生)

★修学旅行中に長崎の原爆のことについて知った時、相当な衝撃を受け、ここまで深く考え、本を出版しようと考えたのはすごい。そして、それが様々な国に出たことを考えると、いろいろなことをたくさんの人に知ってもらえたのがうれしい。学校に行く代わりに働かされていたのは知らなかった。原爆は爆発した後、地面が3000度に達するほどのい力ががり、焼けこげたことは知っていたが、爆風、鉄もとけ、ガラスの破片が飛んできたことは知らなかった。人が高くまでふき飛ばされるほど風が強いなんて知らなかった。たった数秒で街も人もなくしてしまう核兵器はなくしていかなくてはならない。目立った外傷がなくても、放射線のせいで病気が発生。それも落とされたところに近いところからどんどんと発生していく。長野さんの弟や妹を思い、鹿児島から連れ帰り、やっとというところで、二人とも息をひきとってしまった。連れ帰らなければ、あそこで引き返していればと後悔している。いつもの日がいきなり数秒でこわれてしまう。それを思うと、核兵器は絶対に世界から消さなければならない。数秒で何万もの人が亡くなる。それが事実だと知っていても、信じられない放射線を浴びた人の子どもにも影響があるなんて知らなかった。さっきまで話していたのに、さっきまでいつも通りだったのに、いきなり亡くなってしまうなんて、きっと目の前にあることを信じられなかったはずだ。想像するとぞっとする。その人の人生を変えてしまう兵器、戦争は絶対に許してはならない。終戦しても、自分と現実を受け入れるために闘わなくてはならなかった。アメリカの教育を変えてほしい。核兵器について誤った考えを生み出すかもしれない、原爆投下は決して正しくない。まず、戦争をするのが正しくない。今ある核兵器を全て使ってしまえば、人類は絶滅するかもしれない。落とされた原爆よりも今ある核兵器がくらべものにならないくらい強いなんて信じられない。長崎の人たちが過去のことを引きずるのではなく、「歴史上で最後の被爆地になること」これを目標として行動しているのが、すごく感動した。ここで被爆者の体験を語りつがなければ終わってしまう。いろいろなことを教えてくれてありがとう!(7年生)

★『この世界の片隅に』という原爆の映画をつい最近観ていたので、とてもその映画とも絡めて考えながら聞くことができた。米国の人が米国で教えられたことしか知らない、日本で教えられていることを知らないように、自分も日本で教えられていることしか知らず、米国ではどのような意見があり教えられられているのかを知らなかったし、考えたこともなかった。知る、考えるキッカケができてよかった。(8年生)

★アメリカでの原爆の印象やとらえ方などの話をもっと聞いてみたいと思いました。今、ニュースでやっている戦争は、場所も遠くて、私にできることは何もないと思っていました。でも、今回、スーザンさんのお話を聞いて、今、私にできることは過去や今の戦争について学び、戦争の恐ろしさを受け継ぎ、のちに忘れられることがないように、次の世代にも受けついでいくことなんだろうな、と思いました。(8年生)

★スーザン・サザードさんが原爆のことをアメリカと日本、両方の視点で考えていたように、私も様々なことを両方の視点から見られるようになれたらと思いました。お話を聞いて、当時の子どもたちの身体の影響が思ったよりもひどくて、より原爆のおそろしさを感じました。放射能をこれ以上排出するものを使ってはいけないと思いました。私も、長崎が最後の被爆地であってほしいと思いました。(8年生)

★私にとって、戦争とはどこか遠い話な気がしていました。スーザンさんの話の中で当事者たちにとって戦争は一生忘れられないもので、一秒一秒を鮮明に覚えているという言葉を聞いて、自分の中でイメージの湧きづらいものでも、当事者たちにとって一秒を忘れられない大きな出来事だったのだと改めて思いました。そして17才など学生のうちに家族を失うということは、私の想像よりもはるかに辛いことだなと感じました。そこから先の人生、生きるのも辛く部屋に閉じこもった人もいた。そこからまた明るく生きるということは本当にすごいと思いました。それと同時に部屋を出るまでに何年も何十年もかかるほどとても苦しいことだとより感じました。(9年生)

★今まで学んできた、聞かされてきた被爆体験談というと、直前や直後の事しか語られなかったイメージだったのに対して、今回の講演では被爆者の「現在」にもフォーカスがあてられていて、今までと違ったより長期的な視野での戦争のむごさのようなものが知れ、とても興味深かった。また、アメリカでの原爆投下への捉え方がポジティブである現状に対し、悔しさを覚えたと同時に、人類と核兵器の断絶が実現するためには、日本だけではなく世界中の人々が対話を行っていく必要性があると感じた。(9年生)
★争いがあったとき、両者の意見を聞き、犠牲者が出ないようにしたい、二度と核兵器を使おうと思う人が出ないようにしたい、スーザンさんの話を聞いて、今が平和だとしても未来も平和だとは限らない、昔のような争いがまた生まれるかもしれないと思えた。そもそも平和とは何なのか、そこを考えて、じゃあどうしたら核兵器を使うことを無くすことが出来るか、色々な事を考えた。良い機会をいただけて良かったです。(9年生)

★貴重な講演ありがとうございました。今日の講演を聞き、平和について考え続けていかなくてはならないという言葉が一番心に残りました。今の時代はほとんどの人が平和について考えることもなく、当たり前のものとして生活しているということに気づかされました。平和について考え続けていくことが大切であり、当たり前のものではないことを忘れてはいけないなと思います。これからの時代を生きていく人々が、平和について考え続け、後世に伝えていくことがとても重要だと思った。(9年生)

小畑典子(7年社会科担当)